2023年度GW呉氏開門八極拳講習会レポート
今回、5月3、4、5日に行われた呉氏開門八極拳講習会に参加しました。私にとって2017年度に参加して以来、6年ぶり2回目となるGW講習会です。とても楽しみである反面、東京へ行く機会の少ない者ですので大分緊張もしていました。
私が参加したのは徒手の講座で、今年の徒手講座の主題は「単打・対打・扶手・劈掛拳などを学び各々を融合させレベルアップを図る」というものでした。今回私の参加を強く推した理由の一つが扶手、劈掛拳の学習です。というのも山形同好会前会長の須藤先生が生前、扶手・劈掛拳をお教えしたのは現在同会の中では私の先輩2人だけであり、しかもそれも大分以前とのこと。私を含めそれ以降の会員はそれらを見たこともないような状況です。そのため扶手、劈掛拳を学び自身はもちろん同会の会長を引き継いだ者の務めとして会全体をさらに進歩・発展させたいという思いが湧き参加を決めました。
1日目は単打から開始しました。
全員で単打を行っていきましたが、普段こんなに大勢で練習を行うことのない私にとってはやはり少し萎縮してしまう場でした。早速最初の二郎担山で服部先生から「四六歩なのに重心が真下になってしまっているので重心の位置を注意しましょう」とご指摘を頂きました。その後も各々に修正すべき点をご指導くださいましたが、私がその回数が一番多かったかもしれません。度々流れを止めてしまい皆様に申し訳ありませんでしたが、自分がいかに変な癖がついていたのかがよく分かり既にこの時点で参加して本当に良かったという嬉しい気持ちでした。
休憩時間にも皆様がそれぞれ質問やお話をされているのを見ていると良い意味で気持ちが休まることはありません。単打における蹴りの練習に入り、その体の使い方も学ぶことができたし、単打での本来の蹴りの意義は目から鱗であり、この場にいなかったらずっと知ることができなかったかもしれないと今でも感じております。
後半は2人1組になって対打の練習に入りました。対打は練習頻度が少なく全く自信がありませんでした。案の定、掖捶で膝が伸びてしまう、打開の掌が横になっている、最初の大纏を掛けるとき小纏の掛け方になっている、等々本当に些細な点で間違っていました。歩型も不安定で進行方向すら間違う始末。山形同好会が長い間本部の練習に触れることができていないから、ということとは関係なく自身の功夫があまりにも足りていないため付いていくことができませんでした。でもそれだけ学ぶことが沢山あるのだから何としても山形に持ち帰ろうという気持ちで懸命に練習に打ち込みました。私の呑み込みが悪く何度も同じ所でつまずくのにも拘らず、ペアを組んでくださった大森教室の方はその都度丁寧に分かりやすく教えてくださりました。その後の2日間もずっと一緒に練習して頂き本当に感謝しております。
そして最後に整理運動代わりに劈掛拳の基本功となる歩法と劈掛拳を行いました。劈掛拳はYouTubeの開門拳社公式チャンネルが載せていたShorts動画で観ていたもののそれは套路の一部であり、全貌を、しかも直接この目で見るのは初めてのことでした。やはり普段行っている動きとはまるで違い、強いて言えば四朗寛と風格が似ているなぁ、というのが率直な感想です。見様見真似で頑張ったものの当然全くできず、これをこの講習会で覚えられるのかと一気に不安になったところで一日目を終えました。練習と慣れない土地で過ごすという心身両方の疲労感でとてもくたくたになりましたが、宿泊先で睡魔に襲われながらも学んだことを思い出しノートに整理する時間は何とも言えない幸せなものでした。
2日目は歩法と八式、小架一路から開始しました。これらも山形で練習してきたものと動作が変わっていたり自分の変な癖によって戸惑うこともありましたが、教練が修正してくださいました。
この日は対打をメインに練習する日となり、1日目で学んだことを直せるよう意識しました。修正できたと思えば別のところが戻り、今度それを意識すれば修正できていたところが戻り、という3歩進んで2歩下がるような有様でしたが皆様のご指導のお蔭様で少しずつ良くなっていきました。服部先生のご指導も徐々に熱を帯び、梱身大纏の要領やなぜ跳山閉肘で本当に跳ねる必要があるのか等初めて聞くことも多くありました。その中でも立身中正はとてつもなく重要で、3日目になりますがなかなか立身中正を保てていない全体に対して服部先生が、「八極を学ぶ者で立身中正をできていないのはありえない、全然なってない!」という旨の言葉をやや強めに仰っておられたことがそれを物語っています。そして私個人としては「熊澤さんはとにかく下半身が弱いから技を掛けるときも受けるときも安定しないので、毎日站椿と小架一路を行ってください。」とご指摘頂いたことを特に肝に銘じ、少ししか時間がとれなくても必ず毎日行っております。
最終日となる3日目は有難いことに早めに会場が開くということで、服部先生が来られるまで前日同様歩法と八式を行って準備しました。服部先生が到着され、最初に行ったのが内功五法の中の一部(懸肢貫指功の最後の方?と獅子抱球功)であり、これには心の中で大喜びでした。実のところ自分の職業柄、内功五法は呉氏開門八極拳の存在を知り始めた頃から強い興味がありました。しかし気功は下手に独学で行うと健康や精神に支障をきたす場合もあるとよく耳にしていたため、いつか直接先生方に教えてもらえたらと願っておりました。一部とはいえまさかの機会に恵まれたのはまさに幸運です。
せっかく教わることができたのだからやはり内功五法も毎日練功しなければと強く思いました。
前半は単打・対打の総ざらいに加え六肘頭も学びました。六肘頭も何度もつまずくところはありましたが自分なりに焦らずじっくり覚える気持ちで練習させて頂きました。
対打も最初のころと比べると明らかに改善したと思います。
そして後半、いよいよ扶手と劈掛拳です。呉氏開門八極拳における戦闘形式の練習の中核となるのが対打、スピードを養うのが六肘頭で、この扶手とは戦闘における狡猾さと俊敏さを鍛えるもの、という服部先生のお言葉通り扶手には対打、六肘頭にはないような風格を感じました。距離はより近く、攻防における体の使い方もよりコンパクトで合理的であり、的を射ているかどうかあまり自信はありませんがそのように感じました。
対打、六肘頭、扶手はそれぞれ風格が変わっても共通して重要になるのが攻防を安定させるため立身中正を保つことやそれを実現させるための歩型などの基礎であり、これがなかなかできていなかったため「学び初めの頃など対練中にふらついてしまうことは仕方ないとしても、それがなぜなのかを考えないこと自体がダメ。もっと危機感をもって考えないと。」と、服部先生から全体に対し少し厳しめのご指摘がありました。これは八極拳に限らずあらゆる分野で共通していると思います。何も考えないのはもちろんダメですが、いきなり答えを教えてもらおうとするのではなく自分で考えながら練習を行い、それでも分からなければ先輩方や仲間に、それでも解決しなければ先生方に教えを乞う、という意識を大切にしなければと思います。
最後の劈掛拳は服部先生、教練を交えて全員で行っていきました。ゆっくり行ったものの慣れない動きに翻弄されなかなか覚えられません。それでも最後尾におられた進藤教練が丁寧に教えてくださったので何とか食らいつくように頑張ることができました。正直な話、私は劈掛拳に対し興味はあったもののそこまで強い意欲はなく、山形同好会のためにという気持ちで講習会入りしました。しかし不思議なことに練習を重ねるごとに八極拳とはまた違う足の運び方や体の使い方に面白さを感じ始めていました。練習の締めに、八極拳を学ぶ人なら恐らく一度は耳にしたことがある「八極に劈掛を加えれば云々 …」の本当の意義を服部先生が教えてくださいましたがこれは思った以上に秘伝のお話でした。そしてこれをお聞きしてもっと劈掛拳も練習していこうという気持ちに変わりました。
今回の講習会は3日間とも本当に充実したものとなりました。お蔭様で当初の目標の一つである「山形同好会の進歩・発展」のための大きな一歩を進むことができました。また自分自身も成長できましたし沢山の課題も見つけることができました。そう簡単に解決できない課題も多くあると思いますが焦らず着実に向き合って参ります。
最後に、服部先生をはじめ教練・参加者の皆様には練習前や休憩中でも快く質問に答えて頂いたり無理なお願いも快諾して頂いたりと、様々な場面で本当にご親切にして頂き心より感謝しております。本当に有難うございました。
山形同好会 熊澤竜也 |