2024.GW 第22回 呉氏開門八極拳講習会

2024年4月27日~5月5日

5年ぶりに呉氏開門八極拳 七世掌門人 呉連枝老師,助教に八極拳国際訓練中心の張楠教練をお迎えし、【第二十二回 開門拳社主催 ゴールデンウィーク講習会】を開催いたしました!

【短棍講座】
4/27・28・29
秘伝武器「乞丐棍」基礎~応用

【徒手講座】
5/3・4・5
呉氏開門八極拳 初級~上級

武術専門誌「秘伝」の取材を受けました。「月刊秘伝 2024年8月号」に、当会のGW講習会の特集記事が掲載されます!
記事のタイトルは、「呉連枝老師5年ぶりに来日! 呉氏開門八極拳講習会 秘伝武器「八棍頭」の基礎から応用」です。

八極拳を題材にしたセガのゲーム「シェンムー」で、主人公 芭月涼の声を演じられた声優・俳優の松風雅也氏がご来訪されました!

呉連枝老師と旧交を温めていらっしゃいました。

両儀 <短棍講座> 両儀 両儀徒手講座> 両儀

両儀歓送会・その他両儀

両儀 いちばん下へ 両儀

【短棍講座】

講習会は、「短棍講座」から始まりました。



短棍の用法を示演される、呉連枝老師と張楠教練。

両儀両儀両儀

GW講習会レポート

2024年の呉氏開門八極拳講習会の、全日程に参加させていただきました。

・前半「八棍頭」
初日 基本功
二日目 套路4段階目まで
三日目 套路最後まで

 前半は、上記のような流れでご教授いただきました。
 八極拳の棍術なんて最高だ!って思いながら参加させていただいておりました。
 八極拳法十大形意というのも教わって、太極図から力の流れまで説明していただいて、勉強になりました。棍術に関してはかなり楽しいと思ったので、今では仕事の出張先にも棍を持ち込んで練習もしております!(会社に何しに行ってんだお前とツッコまれましたが)

・後半「徒手」
初日 基本功、小架一路分解動作
二日目 単打分解動作、対打、対練
三日目 行劈拳やこれまでのまとめ等、打ち上げ

 小架一路の分解動作はかなり勉強になりました。あーこうやって練習すれば絶対うまくなるな~と思いました。ひたすら打ち込むべしですね。
 張楠教練の迫力のある動作は覚えておりますので、それっぽくなったつもりで練習します!打つってこういう事かと思いました。

 開門拳社に入会して約3年が経ちましたが、呉連枝老師とは初めてお会いすることができて大変うれしかったです。また、タバコ休憩タイムに馬歩を直していただいたことは一生の思い出になりました。また、張楠教練もものすごい迫力でびっくりしました。

 呉連枝老師に、図々しくも5枚も色紙をお書きいただきました。大変お手間を取らせて申し訳ありませんでした。ありがとうございます。一生の宝にします。
 来月引っ越す予定でもありますので、額縁に入れて玄関に飾るつもりです(引っ越し先の風水を風水アドバイザーに見てもらったら玄関に白黒のモノを飾ると開運と言われたので、早速飾らせていただきます!)

 今回の講習会も最高でした!!ありがとうございました!
 呉連枝老師、張楠教練、主催して下さった服部先生、教練の方々、生徒の皆さん、全員に感謝いたします!

本部教室 土橋

呉連枝老師による、短棍の理論の講義。服部代表が通訳を務めます。

短棍の実戦用法を見せてくださる、呉連枝老師と張楠教練。

武術専門誌「秘伝」の取材を受けました。「秘伝 2024年8月号」に、当会のGW講習会の特集記事が掲載されます!

両儀両儀両儀

2024年 ゴールデンウイーク講習会レポート

 去る2024年4月27~29日および、5月3~5日、毎年恒例となる開門拳社ゴールデンウイーク講習会が開催されました。
 今年は5年ぶりに七世掌門人である呉連枝老師と、孟村八極拳訓練センターで教鞭を執られている張楠教練のお二人に来日していただき、前半4月27~29日は「短棍」を、後半5月3~5日には「徒手」を中心に学習することとなりました。
 久しぶりにお会いした呉連枝老師は、以前とかわらずお元気そうではありましたが、御年77歳ということもあり、主に張楠教練から指導を受け、要所で呉連枝老師より詳細な解説を賜ることとなりました。
 今回はこの特別なゴールデンウイークの報告をさせていただきたく思います。

 前半で学習した武器、短棍は「乞丐棍」とも呼ばれており、刀、剣、棍、槍といった八極拳における主要武器の要素が混在した、元来秘伝の武器でした。他の武器が殺傷能力に長けている中、短棍は「不殺の武器」とされており、その用法は行動不能にさせたり、動作を制圧することを主眼としています。
 短棍は以前(2012年)、呉連枝老師よりご指導いただいており、前述の短棍の特徴もその際にお教えいただいたものです。当時の言を付け加えるならば、短棍には発力はほぼ不要であること、この武器自体が他の武器を学習した上で行使することが前提となっているため、短棍のみで修練を積むのは難しい、とおっしゃっていました。そこを踏まえての今回の講習会でしたが、いざ始まってみると驚きの連続でした。

 1日目、まずは短棍の単式練習を張楠教練よりご教授いただきました。単式練習の種類は全部で18動作あるとのことです。
 例えば、打花子ひとつとっても片手で行うもの(単手打花)、両手で行うもの(双手打花)、歩きながら行うもの(行歩打花)等、武器の操作と歩形を組み合わせた様々な単式練習があるのです。これらの18個の動作を身体に刻み込むように何度も繰り返し行い、初日は終了となりました。すべては2日目以降の套路練習のためといえましょう。
 余談ですが練習終了後、張楠教練が立っていた床を見てみると、足を移動した跡がくっきりとしかも大量に残っており、張楠教練の凄さを改めて理解しました。

 2日目は前日の単式練習の復習から始め、いよいよ套路を学習することとなりました。短棍の套路は他の武器套路に比べても長く、大きく分けて8つの区切りがあるとのこと(八段・八回頭)。動作自体は以前学習したものと「それほど」変わらないというお話だったので、いざ取り組んでみたものの、思っていた以上に「違い」が大きかったです。
 動作の順番等は確かに大きく変わっている所はなかったのですが、まず驚いたのは力強さです。
 以前習った短棍では「不殺」という前提があるため、棒の先端を使った打撃も精妙に突いていくイメージがありました。しかし今回張楠教練より教わった短棍套路は「不殺とはなんだろう」と思わせるほど一つひとつの動作にパワーが乗っていました。運が良ければ命は助かる、というレベルの。

 良い意味でショックを受けたまま練習は続きます。気づけば四段(四回頭)まで進み、そこからはペアを組んでの対棍練習が始まりました。
 対棍については自分を含め、多くの方が初めて体験したのではないでしょうか。実際行って感じたのは、短棍という武器の自在ぶりです。防御側の視点では、上や正面から打ち込まれたときの圧のかかり方に驚愕し、下から打ち上げられたときは受け損ねそうなほど視界外から襲いかかってきます。攻撃側としては、思った以上に「伸びる」打撃や突きに戸惑いを覚えました。とはいえ短棍の実用法の一端を学習できたことは実に僥倖でした。

 3日目、短棍講習会最終日です。
 単式練習からの、前日分(四段)までの復習を行い、この日はそれ以降、最終段までの教習となりました。
 五段以降は新鮮な気持ちで取り組めるような違いがありました。個人的に最も違いを感じたのは六段の「左右抜草尋蛇」でしょう。字のごとく棒を左右に振り、藪に潜む蛇を追い出す動作を行うことで相手の足首を狙う、というものだったはずですが、今回見たそれは振るというより、一歩前に出つつ棒を左右に振りぬくという、力の権化のような動作でした。
 この段階でようやく自分の短棍への考え方や向き合い方が凝り固まったものであるか思い知らされました。呉連枝老師も張楠教練も、短棍とは本来自由なものであるとおっしゃっていました。ただそれは無軌道に棒を振り回せばいいというわけではなく、八極拳の理にかなった扱い方をしなければなりません。それを実現させるための道筋として、そして短棍の持つ用法の一側面を伝えるために今回のような形になったのではないか。浅薄ながらそのように感じました。

 そんな刺激を受けつつ、3日目および前半の短棍講習会は終了しました。戸惑いの多い講習会でしたが、それは決してネガティブなものではなく、いわゆる「わくわくしてくる」といったポジティブな戸惑いを受けるものでした。長い上に複雑な動作もある套路であるが故、普段の練習や、教室での拳友たちとの復習をすべきだ、と心に誓ったのでした。
 また余談ですが、度重なる単式練習のおかげで、苦手意識が強かった打花子がほんのちょっと、ほんと少しだけ、やりやすくなったような気がしました。気がしただけじゃだめなのですが…。

 5月3日、講習会後半が始まりました。この日から始まる3日間は徒手を中心としたものとなり、日ごとに学習内容が変わるというものです。

 1日目で学ぶのは小架一路を中心とした単式練習などです。まずは張楠教練より孟村八極拳訓練センターで行われている練習方法をご教授いただきました。
 張楠教練によると、単式練習は歩法と単式動作あわせて17項目あるとのことです。
 歩法の練習では、手の動作は付けず、足のみの動作する練習法を行い、徐々に上歩掌や上歩拳へと移っていきました。ここで個人的に衝撃を受けたのは捻歩の練習をしているときに震脚を要求されたときです。今まで震脚動作がうまくできず悩んでいたのだが、今回の練習プロセスを踏まえていくことによって、今まで練習してきたなかで比較的うまくできた(ような)気がしました。当然、完璧に理解できたわけではありませんが、上達の糸口をつかんだように思えました。

 その後、小架一路の学習が始まりました。ここで特筆すべきはその練習方法でしょう。初段から動作を学び、最後まで通して練習するスタイルではなく、套路全体を5~6分割し、その分割部ごとで反復練習をすることにより練度を高めるというものです。これには目から鱗が落ちる思いでした。
 我々の行う反復練習は、練習したい箇所の前後1~2動作分を切り抜いて行ってきた。それはそれでよい部分もあるのですが、今回のスタイルは反復しやすい箇所で分割することによって、動作が煩雑な部分の練度も上げていく効果があります。
 イメージとしては吹奏楽において、特定のメロディラインを何度も反復練習しクオリティを上げ、最終的にそれらを接合してよい演奏にしていく、と考えるとわかりやすいでしょうか。

 この日の終盤、呉連枝老師より小架一路について、易経と関連させた理論解説を行っていただきました。易経を用いた八極拳の理論解説は度々なされており、服部先生が今回改めて聞いたところ、この考え方は誰かが確立させたわけではなく、代々受け継がれ、補強されていたということでした。
 それを踏まえて、小架一路内に含まれる陰陽の要素(衝天炮ならば陽、閉(地)肘であれば陰、等)、そこから高じて零(ぜろ)から無形に至る64の要素(易経の六十四卦から来ているものと思われます)についての説明も賜りました。
 ここまで来ると浅学の身では理解がなかなか追いつかないところではありますが、何もない零(太極)より始まり八卦を重ね無形へ至るのだが、無形は0ではあるが最初の零とは違いすべてが含まれた零であるというお話は印象的でした。
 無形に至るまでには両儀・三才・四象・五行といった過程を経て、その中に含まれる意味が(五行であれば金木水火土、それに対応する人体の部位等)、混然一体となり無形を「形作る」のでしょう。渾然一体はまた混沌であり、またそこから何かが生じる…。こう書き出してみると要素の合一こそが核なのではなかろうか、と思考のドツボにはまっていくようです。この無形に関して記した内容は的外れである可能性大なので、一笑に付し読み流していただければ幸いです。

 2日目は主に単打・対打を中心に行われました。この日印象に残った出来事はふたつ。ひとつは対打の練習法です。我々が普段教室で練習する対打は、相手と接触して行っていますが、今回教授していただいた対打練習法のひとつに「相手と離れて打つ対打」というものがありました。実際やってみるとこれが難しい。通常の対打であれば、相手からの力を利用して自分の動作を行うわけですが、これはある意味、他人の力に身を任せて(補助動力として)完成形をとっているだけ、と言えなくもありません。ところが非接触対打はそういったごまかしが効きません。自らがどうやって攻めているのか、もしくは防御しているのかを認識して動かなければ双方がぎこちない単打をしているに過ぎません。
 これは対打の順番を覚えて、慣れてきた人達にとっては(自分のことですね)取り入れるべき練習法ではないでしょうか。

 もうひとつは八極拳における震脚理論、ひいては発力理論の解説を呉連枝老師より教えていただきました。発力において重要なポイントは3つ、すなわち上下の力、内外への捻る力、そして加速力。これらを合一することで爆発力がある一撃を出すことができる、といいます。ここでも合一という言葉が出てきます。いかにこの要素が重要かがわかる内容であり、自分には上下の力が不足しているのでは、という気づきを得るきっかけともなりました。

 最終日の3日目は、張楠教練が習得されているという行劈拳を四路まで学習することになりました。以前我々が学んだ行劈拳とは違い、徐瑞才先生より伝授されたものとのことです。そもそも行劈拳は、大きな溜め(蓄)を作ったのちに出る力(発)が強調された勇猛な套路です。今回教えていただいた行劈拳もまた、激しく素晴らしい套路でした。
 新しい套路を学ぶということは、参加者皆が同じところからスタートするということです。套路が進むたびに拳友同士で順番を確認したりディスカッションしたり、わからないところは張楠教練に質問し、それらを共有し研鑽していく。その甲斐あってか、一応四路を最後まで学びきることができました。
 とはいえまだ付け焼刃程度の習得レベルです。これも個々で練習しつつ、教室などで練度を上げていきたいと思います。

 その後、教室で学んでいる対練を改めて教えていただく機会を得ました。長い期間同じ対練を行っていると、ふと「これでいいのだろうか、できているのだろうか」という思いに囚われるのは自分だけではないでしょう。そんな時は服部先生や教練の方々に質問し矯正していただいてはいますが、それでも疑問が完全に払拭されるわけではありません。そのためにも改めて呉連枝老師ならびに張楠教練に教鞭をとっていただいたのです。

 個人的に興味を持ったのは三靠臂の練習法です。腕同士を合わせる際、点ではなく面、つまり腕の一部分をぶつけ合うのではなく、腕という部位そのものを面として意識することの重要性を、呉連枝老師に語っていただきました。
 打撃という行為はどうしても力が入ってしまう。なので打撃をしあうのではなく、互いの腕をこすりつけあうという認識を持つことが大切と繰り返しおっしゃっていました。
 自分も集中力が途切れ、つい打撃寄りになってしまうことがあります。十分気を付けて鍛錬に励んでいきたいです。

 以上、計6日間を費やして行われたゴールデンウイーク講習会の報告をさせていただきました。今回の講習会もまた、大きな気づきと衝撃に満ちた刺激的な時間でした。しかし、ただ刺激を受けただけではいけません。それを普段の練習や、教室での鍛錬に活かしていかなければなりません。それこそが自分のために、そして八極拳全体のためになることだと信じて。

 最後に、我々への指導のために来日してくださった呉連枝老師と張楠教練にお礼申し上げます。
 また、今回の講習会のために尽力してくださっただけでなく、通訳も行ってくださった服部先生に心より感謝申し上げます。
 そして、講習会運営に奔走された指導員の皆様、ならびに今回の講習会に参加された方々、本当にお疲れさまでした。
 今後ともどうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

本部教室 新井

友好団体「日本八極拳法研究會」の渡邉代表と組んで、短棍の実戦用法を教示する服部代表。

短棍の基本功を学習します。



短棍の対練。体育館に棍を打ち合わせる音が響きます。

関西から友好団体「日本八極拳法研究會」の渡邉代表と「関西八極門学堂」の石田代表がご参加されました。

短棍講習会にご参加の皆様、お疲れ様でした!

両儀 いちばん上へ 両儀

両儀 短棍講座 両儀 両儀徒手講座 両儀

両儀 いちばん下へ 両儀

 

【徒手講座】

全員で列を作って対打を練習します!

両儀両儀両儀

2024年ゴールデンウィーク講習会 参加レポート

 今年もゴールデンウィークの八極拳講習会に参加させて頂きました。
 今回は5年ぶりに呉連枝老師と張楠教練が来日され、直接ご指導を頂くことができました。久しぶりに呉連枝老師の元気そうなお姿を拝見できましたことが、何より嬉しい6日間となりました。

  4月27日からの3日間は短棍の套路や用法について、5月3日からの3日間は主に徒手を中心にご指導頂きました。短棍の初日は、単式練習ならびに対練についての講習です。

 単式は打花子、提柳、擦棍、跳、蓋など、提柳刀や行者棒と親和性の高い動作がとても印象的でした。また今回、「点」や「撩・劈」などの動作が、苗刀ととても似通っているようで興味深かったです。
 直前に苗刀の講習を受けていなければ、間違いなくもっと混乱していたと思うのですが、服部先生は「その時意識が向いている武器の印象に引っ張られる事があります」と仰っていましたので、短棍自体が想像していたより融通無碍な兵器なのかも知れません。

 短棍の中には刀・剣・棍・槍すべての武器の用法が含まれると聞いていましたが、あらためて単式を眺めてみると、他の武器の難しい基本功が立て続けに現れてきます。重量がないぶん、むしろ腕力に頼ることの悪影響が表面化しやすいくらいなので、これは他の武器の総練習量が見えてしまうなあ、と思いました。
 発力はコンタクトの瞬間のみで、その際肘と肩は緩んで落ちていなければなりませんが、肘を落としたまま棍を動かすには、胯を目一杯切るしかありません。短棍を他の武器に近づけるために、身法や歩法から矯正する必要があり、軽い武器のようでいて練功具の側面もあるように感じました。
 また対練では伸びてくる擦棍が見えにくく、間合いを読むのがいかに難しいかを痛感させられました。自分の棍の到達距離も、身法次第で大きく変化するので、回数を重ねて距離感を体に覚えさせる必要がありそうです。

 2日目以降は短棍の套路についてご教授頂きました。
 短棍の技術は八極拳のごく初期の頃から存在していましたが、現在の套路の形に編纂されたのは呉秀峰公であったそうです。単招式を繋げて作られた套路だとすると、提柳刀などと似た生い立ちを持つように思われます。
 套路の形で保存されていれば、そこから基本の動作を復元して練習でき、抜き出す招式は自分で工夫して組み合わせを変えても良いようです。
 八回頭棍は非常に長い套路ですが、12年前にご指導頂いた套路と、構成としては全く同じといってよいものでした。ただ、個々の招式の架式は低く発力も大きいため、体力的にはかなり厳しく、全体の印象もだいぶ違って見えます。知っている道を歩いていたはずが、周りの建物が変わってしまって迷子になる様なイメージでしょうか。

 今回の套路は発力がとても明確でしたが、徒手の発力とあまりにも違いがないので驚きます。短棍は不殺の武器と聞いていましたが、不殺にできるというだけで、徒手の功夫が高い人が持つと、非常に怖い兵器だと思ってしまいました。
 脇を締めて頭部や体幹部を守り、歩法と上肢を協調させる仕組みなども、八極拳の徒手そのものです。
 八極拳の槍と徒手は最初から一体のものに見えますが、短棍には様々な武器の用法が含まれながら、それぞれ徒手との距離感がとても近く感じられます。特に体幹部の運用を通じて、いろんな武器と徒手とを、分かりやすく結び付けてくれている様に見えます。
 他の武器を練習すればするほど、徒手の発力が大きくなるほど、短棍の戦闘力は掛け算で大きくなるのではないでしょうか。

 かつて、身の危険があると分かっている場所に赴くとき、短棍を携えていたとのことですが、そもそも短棍自体が隠し武器であったように、杖に見せかけて用途を隠し、物乞いに似た動きで強さを隠し、伸びやかな擦棍で本当の間合いを隠しているように見えます。
 套路の中でも、この動作は別のやり方でも良いですとか、元の套路の好きだった部分が省かれていたり、突く動作ひとつとっても、状況に応じて違う武器の用法に入れ替えても良いようなので、一人で練習するときには、双方の套路から好きな動作を付け替えて練習できるようになりたいです。
 短棍を見ていると、あるときは身を守る盾であり、あるときは徒手の威力を拡大する梃子となり、相手に合わせて様々な兵器を持ち替えているようにすら見えます。
 徒手と同じように、武器が無形へと向かってゆく過程を表しているのかもしれません。

 後半の5月3日からは徒手を中心とした講習です。
 初日は基本功を中心に、站椿から歩法の学習へと進みました。
 歩法では、跟提歩や闖歩を複数の動作に分解して、段階的に学ぶ練習法をご指導頂きました。特に闖歩は、完成形を見ると一瞬で落地しているようにしか見えませんが、それがどんな要素の組み合わせで出来ているのかが明確になり、とてもわかり易かったです。
 単式練習では、上歩拳が点子手と冲拳に分かれているものと、動作が途切れないものの二種類になっていました。以前服部先生に孟村の訓練センターに連れて行って頂いたときにも、この二種類を分けて練習していたことを思い出します。
 また胯打が上、中、下からに分類されていたことも、考え方が整理されていて興味深かったです。

 続いて小架一路を通して練習したあと、套路の動作を一つずつ抜き出して反復練習を行いました。実は今回の講習会で一番印象に残ったのがこの練習法で、一つの招式を十回くらいずつ繰り返すのですが、その間も徐々に自分の動作が修正されてゆくのが分かります。
 服部先生も仰っていましたが、套路を通して練習するだけでは、個々の招式がいいところ一、二回ずつしか出てこないので、なかなか使えるレベルまで上達しないように思われます。これまで套路の中の苦手な部分を抜き出して練習することはありましたが、すべての招式を抜き出し練習しようと思ったことはありませんでした。
 全ての動作を十回ずつ繰り返せば、套路を十回打つのに相当するので大変疲れますが、套路を十回連続で打つよりも効率的な学習法なのではないかと思います。

 また、小架から一連の二、三動作ほどを取り出しての反復練習も行いました。
 その取り出す部分は自分で変えても良いし、取り出す長さも自由に変えて良いそうです。
八極拳では発力直後の形が、そのまま続く動作の蓄になっていることが多いので、上手くいかない招式の原因が、一つ遡った動作にあったりします。この練習法であれば、このような問題も修正されてゆくので、とても理に適っていると思いました。
 単打についても同じ練習法を教わりましたので、おそらく四朗寛などでも同様なのだろうと思います。
 何かを教わってもその日に強くなる事はなくて、結局自分が練習するしかないのであれば、教わることができるのは練習のやり方、ということになります。開門のために、抜き出し練習を工夫することの意味がいかに大きいか、あらためて勉強になりました。

 続いて八極拳と中医学の関係や、小架と八極拳の理論について講義がありました。
 これらの内容は非常に難しく、講義を聞きながらメモを取るので精一杯という感じでしたが、八極拳を医学の面から正しく理解して練習すれば大きな健身の効果があること、正しく練習しないとどこかで体を壊してしまう可能性があること、などについてご説明がありました。
 無駄に地面を踏んでしまう傾向がある私にとっては、大いに気を付けなければならない内容です。練習の仕方もそうなのですが、これらは長い時間をかけて非常に大きな結果の違いにつながる可能性が高いので、難しいとはいいながら、よくよく肝に銘じなければと思います。
 また、小架と八極拳の理論についてご説明を頂きましたが、こちらも非常に難しい内容です。
 小架の中には八極拳全体の理論が含まれているらしいこと、また八極拳の理論と古代中国の数字の哲学が対応関係にあるらしいという内容でした。
 私達は何を練習しても必ず小架に戻ってきますが、それが元の小架と同じではないこと、八極拳を学習している人がどんな道筋を辿り、その道筋を生きている限り循環してゆくという事ではないかと、勝手に想像しています。

 他にも老小架、対打・扶手などの対練、そして私達が習ったものとは別系統の行劈拳一~四路、十二形抱などについてご指導を頂きました。
 対練で興味深かったのは、相手が離れていたり、居ない状態で行う対打などで、普段ずいぶん相手の動きに助けてもらっていた事がわかりました。自分の中で次に行うことが明確になっていないと、動作に詰まってしまいやすいです。
 そして徐瑞才老師の系統に連なる行劈拳は、以前から学習しているものに引けをとらない攻撃性の強さで、特に胯打を多用するところ、架式の低い劈、拳を翻す寸接打などが印象的でした。

 八回頭棍の方は一つの套路のバリエーションとして、なんとか折り合いがつきそうな気がしていますが、この行劈拳は従来のものとは別の套路と考えたほうが覚えやすい気がします。呉連枝老師は「大きな違いはない」と仰っていましたが、私達の理解力ではそこに遠く及びません。個人的には従来の行劈拳も好きなので、なんとか個別に練習できるようになりたいと思っています。
 ただこのあたりになってきますと体力、記憶力とも限界に近く、十二形抱一路に至ってはまともに覚えることができませんでした。
 とにかく今回の講習会はお土産が沢山で、受け取りきれずに取りこぼしてしまったものも多かったので、他の参加者の皆様とも協力しながら、時間をかけて復習していきたいと思っています。

 呉連枝老師のひとつひとつの動作はやはり人間離れしているとしか表現のしようがありませんでした。
 八極拳の十大形意には様々な生き物の優れた性質が示されていますが、実際にすべてを体現できる方を目の前にしますと、あらためてこの場にいる幸運に感謝せざるを得ません。
 私達の見て理解する能力も、考えながら練習することによってしか培われないと思いますので、幸運を活かす努力がもっと必要になると思いました。

 また今回、長時間にわたりとても丁寧にご指導くださった張楠教練の功夫の高さ、人柄の温かさが強く印象に残っています。老師からの信頼も篤いことが窺われ、「中国の国宝」のお付きとしても、彼以上の人はなかなかいないのではないかと思いました。

 最後になってしまいましたが、今回も大変熱心にご指導くださいました呉連枝老師と張楠教練に、このような素晴らしい機会を与えてくださった服部先生と事務局様に、こころから感謝を申し上げたいと思います。
 講習会に参加された同門の皆様、今後ともご指導のほどよろしくお願い致します。
 ありがとうございました。

本部土曜教室 高須

八極拳の原理について、講義をされる呉連枝老師。

張楠教練が解説のモデルを、服部代表が通訳を務めます。

呉連枝老師に実戦講義を受ける服部代表。

 

2024年度 開門拳社GW講習会レポート

 2024年4月末から5月の頭にかけて、毎年恒例になっている、開門拳社のGW講習会が行われました。
今年は2019年から5年ぶりとなる、呉連枝老師と八極拳国際訓練センターの張楠教練を招聘しての講習会で、とても熱気のある講習会になりました。
 今回の講習内容は前半3日が短棍の套路である八棍頭、後半の3日が徒手の基礎を中心に全般的にという内容で、私は後半の一日目は残念ながら参加がかなわなかったのですがそれ以外の日は参加できたので、その内容をレポート致します。

 4月27日 八棍頭 一日目

 呉連枝老師のおっしゃる所によると呉氏開門八極拳において短棍術は古来から秘伝とされるものだったそうです。
 呉鐘公の時代から短棍術はありましたが元は套路という形ではなく、単式が伝わっていたものを、呉連枝老師の御父上である6世掌門人、呉秀峰老師が套路の形に纏められたものです。刀、剣、棍、槍の四大兵器はもちろん、苗刀などの要素も含んだ、ある意味武器術の技術を集めたような套路になっています。
 私が以前、呉連枝老師に八棍頭を指導していただいたのは2012年のことだったと思うので、12年ぶりになる短棍の講習は緊張しつつもとても楽しみにしていました。

 一日目の内容は主に基本功の単式を中心に、対練を少しといった内容でした。
 今回の講習会は実演、指導は主に張楠教練が行い、補足と理論、歴史についてを呉連枝老師が補足される、という感じで進行しました。
 短棍の基本功は約18式、棍の基本功や刀の基本功とも重なるところも多く、とても練習しやすい印象がありました。張楠教練が教えてくださったものは最近、国際訓練センターで短棍を練習する人のために套路などを参考に作られた単式であるらしく、わかりやすく実用的なものでした。
 歩法による変化、活用の練習も入っており、他の武器への応用も、またほかの武器での基本功としても有効なものがあると思いました。
 対練もまたその基本功の一部を使って二人で打ち合えるように構成されており、定歩、活歩と変化していき、シンプルではあるが間合いの取り方、相手に打ちかかる感覚を学べ、とても実戦的で様々な武器での応用が可能であると思いました。

 4月28日 八棍頭 二日目

 二日目の内容は最初に一日目の基本功を復習し、その後、主に套路の前半部分を行い、そして呉連枝老師に十大形意と十大勁別の解説をしていただきました。
 短棍自体、槍などと比べて頻繫に講習が行われる武器ではないこともあり、套路の経験者も少なかったため、ゆっくりと時間をつかって八棍頭の套路の前半を学びました。

 そして話の流れから、十大形意と十大勁別の解説を呉連枝老師にしていただきました。十大形意は少々難解な理論で、私もまだ一部しか理解できていませんが、八極拳の中に10の霊獣、動物の持つ風格や意があることを解説したもので、技や套路を練習していく上で手助けにしていくやや抽象概念に近い理論です。
 それをより具体的に力や動き、意識の働きで解説したものが呉秀峰老師が作られた十大勁別です。十大形意と十大勁別は数は同じですが、それぞれが完全に対応してこの動物がこの力、という風に解釈するものではありませんが、ただ動物だけを示されるよりも、より具体性を持って理解することができます。八極拳の理論を解釈していく上で、十大勁別は幅広く通用するものであるように思いました。
 呉連枝老師に解説していただき、短棍などの武器術にも十大形意や十大勁別で理解できる部分がたくさんあることが分かりました。
 八棍頭の套路は以前学んだものとほとんど違いはありませんでしたが、張楠教練に教えていただいたこともあり、以前呉連枝老師より教わったものよりも動きが早く、激しい印象でした。

 4月29日 八棍頭 三日目

 短棍三日目は、主に套路の後半と移動での対練、月刊秘伝の取材も入り、呉連枝老師の貴重な話をたくさん聞くことができる日になりました。
套路の後半はほとんど以前のものとは変わりませんでしたが、相変わらず張楠教練の速度の速さと発力の大きさについていくのが大変で、関節等を痛めないように注意しつつ、復習させていただきました。
 二日目以降は広い体育館だったこともあり、初日にはできなかった移動しての短棍の対練を教えていただきました。動作自体は一日目に学んだ対練と同じですが、前進、後退が入ると、棍の操作に集中することが難しくなり、なかなか上手くいかず、とても興味深かったです。
 月刊秘伝の取材は呉連枝老師が語られる、孟村の話、松田隆智先生との話、八極拳の話など、いろいろな興味深い話が聞けて、とても充実した一日でした。

 5月4日 徒手 二日目

 後半の徒手の講習会は、二日目からの参加でしたが、初日から参加していた人に初日は基本功と小架の切り抜き練習を主に行っていたと聞きました。それを次いでか、二日目の内容は主に老小架の一路と単打を単式のように練習する方法、対打、扶手を行いました。
 単打のような套路を細かく分けて、単式として練習したほうが良い。ということは以前から言われていましたが、それを具体的に示されることはなかったのでとても参考になりました。
 套路はいろいろな要素を持っていて、意識、打法、歩法、身法、練功法、呼吸法などそれぞれコンセプトがあり、またそれ自体が一つの作品になっていると思うので、それを通して練習することも価値がありますが、これを単式として切り出すことでそれぞれの動きの精度の向上、体力の向上に効果が大きくなるのではないかと思いました。

 対打は普段行っている実際に打ち合うものの他に、老小架一路の対打で行うようにお互い離れて行うものも練習しました。触れていると相手の圧力があり、それを利用して動ける部分がありますが、離れて行うと意識と呼吸を合わせなければ成立しないので慣れていないと難しいです。一つの物でもアプローチを変えると全然違う練習になることに、改めて単打の汎用性の高さを感じました。
 またこの日は呉連枝老師から八極拳と中国医学との関連性についての解説がありました。中国医学と八極拳の関連性は、六世・呉秀峰老師が中国医学の医師であったことからも、関連が深いのはわかっていましたが、改めて解説していただくのは初めてでより明確に認識を新たにすることができました。

 5月5日 徒手 三日目

 今回のGW講習会の最終日、この日は主に行劈拳の一~四路と十二形抱の一つ、そして対練を行いました。
 また、この日は声優の松風雅也さんとその息子さんがお越しになり、息子さんが講習会に参加されました。
 行劈拳は以前に呉連枝老師から学んだ、呉連枝老師が呉秀峰先生より伝えられた行劈拳とは違う系統のもので、全体的に少しずつ動きが違っていて、思ったよりも覚えるのに苦労しました。
 套路は伝える人によっても教わる人によっても微妙に内容が変わってきます。それは伝統武術ではとても多くそれで難しさを感じることもありますが、それこそが伝統武術の面白さでもあると思います。
 それぞれの個人の戦闘思想、価値観などが套路というものを通して残されている気がして、規定のようにこの套路はこういう順番です、と決めてしまうとその大切な部分が失われてしまう気がします。こういう所に学習する上での、難しさ、煩雑さもあるのですが、そこにこそ、伝統武術の面白い部分があるように思います。

 講習会を終えて

 5年ぶりとなる、呉連枝老師を招聘しての講習会。呉連枝老師は、まったく老いを感じさせない、変わらない笑顔で迎えてくださり、それだけで心がいっぱいになりました。
 張楠教練は5年前とは見違えるほど、功夫も動きの鋭さも指導の上手さも上達しており、それはまた、日々の修練のすばらしさを示すようで、襟を正す気持ちになりました。
 5年前の新型コロナウィルスの蔓延以前、中国はとても近い国になっていくと思っていたし、今後もどんどん近くなっていくだろうと思っていました。しかし、ちょっとしたきっかけによってそこはすぐに行けなくなったりするものなのだ、ということを改めて認識させられました。政治情勢も世界中が不安定になっていき、行き来すら簡単ではない時代がいつ来てもおかしくないということを最近とみに感じさせられます。

 武術の学習も民間交流、文化交流というものの一つとして国と国をつなぐということ、その大切さ、そして学ばせていただく貴重さ、有難さを改めて思いました。
 個人的な感想ではありますが、今回の講習会は、套路の習得よりも、単式練習やその考え方の紹介に時間を割いていた印象でした。それは八極拳国際訓練センターの指導の一部のようであったし、その指導方針を垣間見れるような気がしました。こちらがそれを正確に受け取れたかどうかはわかりませんが、どう考え、どこに重点を置いているかと考えると、こちらの鍛錬の方向や理解の参考になるような気がします。
 これからの練習の参考と励みにしていきたいです。

 最後に久々の呉連枝老師の招聘や、講習会当日の運営に尽力していただいた、参加者の皆様、指導員の皆様、服部先生、事務局様に心より感謝いたします。

大森教室 高久

高度な対練の方法を示唆する呉連枝老師。

遊び心をお見せになる呉連枝老師。(^-^)

ご参加されたみなさま、お疲れ様でした!

  両儀 

まとめ

コロナ禍により、今回は「5年ぶり」となる呉連枝老師講習会を開催いたしました。

丁寧にご指導くださった、呉連枝老師と張楠教練、ならびに、熱心に学ばれた参加者の皆様、大変お疲れ様でした!

八極拳を題材にしたセガのゲーム「シェンムー」で、主人公 芭月涼の声を演じられた声優・俳優の松風雅也氏と呉連枝老師も旧交を温められていらっしゃいました。

そして、関西から友好団体「日本八極拳法研究會」の渡邉代表と「関西八極門学堂」の石田代表がご参加され、さらに充実したものになりました。遠方よりのご来訪、ありがとうございました。

これからも、切磋琢磨して呉氏開門八極拳の功夫を高めて参りましょう!

開門拳社代表 服部哲也

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