2000年5月4〜6日開門拳社主催呉連枝老師講習会レポート
(於:東京都中野区)


参加者のレポート&記録写真


▲呉氏開門八極拳 七世掌門人呉連枝老師


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 私は今回の講習会を、呉連枝老師に初めてお会いするという事もあって、ずっと心待ちにしていました。初めて呉老師に会ったときの印象は、ビデオ等で見慣れているためか、「初めて会った気がしない」というものでした。講習会と、その後の打ち上げを通して感じたのですが、それが呉老師の人柄なのではないかと思います。

 1日目は堤柳刀を教えていただきました。
 最初は基本功からはじめたのですが、刀を振るのもその日が始めてだったので、始めのうちは、なんとか真似事をするだけで精いっぱいでした。
 しかし、大堤柳は鷂子穿林、小堤柳は白馬翻蹄、散陰刀は跟堤歩というように、どの基本功も、脚法ばかりでなく、胯から上半身までの身法が八極拳の徒手の基本功と共通であり、それを理解すれば、どれもそう難しいものではないということがわかりました。
 特に散陰刀の動作は向捶そのものであり、堤柳刀は八極拳の刀であるという事を実感しました。呉老師に通じるかどうか不安になりながらも、「向捶?」「跟堤歩?」と片言で質問した際に、「そうだ」という力強い返事をいただいたときには、とても嬉しく感じたものです。

 刀は刃のついた武器であるため、たいして体力を使わないのではないかとたかを括っていましたが、それが間違いである事に、基本功をやっている時点で気づくべきでした。
 実際、堤柳刀套路は八極拳そのもので、発力を多用するため、1日目の講習だけでへとへとになりました。
 堤柳刀の套路は、発力の方法などの面で徒手套路と似ている部分が多く、また、身法には行者棒と似ている面もあり、それらの套路の互いの理解を総合的に高めていくために、とても重要な套路であると感じました。

 2日目から4日目までの3日間は、小架一路を中心とした内容でした。
 開門八式にはじまり、六大開拳。小架一路、単打、さらには小架二、三、四路までを一気に学習し、八極拳を習いはじめたばかりの方々には、少々きつかったかもしれません。私自身も、小架の三路と四路は、数回ほど目にした事がある程度でしたので、ついて行くのが大変でした。特に四路は、これが小架かと思えるほど、なじみの無い動きが含まれており、身につける以前に、動作の順番を覚えるだけでも大変そうです。四郎寛を覚えていれば、四路も無理なく覚えられそうですが。
 2日目以降は、歩くのもやっとという筋肉痛を抱えての練習でしたが、練習が始まると同時に、痛みを忘れ、体が動くようになるという不思議な経験をしました。呉老師を招いての講習会であるという緊張感のせいなのか、まわりの方々の熱気に押されてのものなのか -- おそらく、その両方なのでしょう。練習が終わると、再び強烈な筋肉痛に襲われ、練習中に感じた力はなんだったのかと思いながら帰宅しました。


▲小架一路の指導をうける。

 最終日には、呉老師に三靠壁と六肘頭対打のお相手をしていただきました。この時の事が、講習会の中で一番印象に残っています。
 三靠壁では、手加減していただいた事もあり、痛みは感じなかったのですが、腕があたる度に、体ごと放り投げられるような感覚があり、つい体に力が入ってしまいました。その時は必死だったので力を入れれば入れるほど、体ごと持っていかれてしまうという当たり前の事に気づきませんでした。冷静に考えれば当たり前の事であり、三靠壁は脱力して行なうという理由の一つを改めて認識するいい機会だったと思います。
 六肘頭対打では、呉老師と向き合った瞬間から、気負されるような感覚がありました。
 呉老師は、構えているときも動いているときも自然体であるのに、実際に対峙してみると、その圧倒的な圧力のようなものを感じるから不思議です。
 自然体でいるからこそ、余計な力が入らず、自由に動き、体の基幹部からの力を無駄なく利用する事が出来るということでしょうか。八極拳を始めたころ(今でも?)は、一つ一つの歩型、動作になれていなかったため、形を整えようとするあまりに、余計な力を入れる事が多かったのですが、呉老師は、八極拳では無理な姿勢・動作は行なわないのだという良いお手本であったように思います。実際、両儀は体の各部分で円を作るという「自然体」ですし、八極拳の動作はみな、両儀の変化ですから。
 また、自然体であるといっても、その拳は正中面から相手を突き刺すような構え・動きであり、それが迫力の理由なのだと感じました。

 5月7日に行われた講習会の打ち上げでは、呉老師は、参加者達の近くを通りすぎるたび、参加者の肩をたたき、声をかけるという、気の使いぶりで、偉そうに振る舞う事のない方でした。
 最終日の三靠壁の事について、「大丈夫でしたか?」と、私の腕の事を心配して日本語で声をかけてくださいました。講習会の参加者は3、40人いたにも関わらず、呉老師は、参加者一人ひとりの事をよく見ており、覚えているようです。

 打ち上げの後、私があらかじめ習っていた中国語で「私は八極拳が好きです」とたどたどしく言うと、呉老師に「『三好』の『三つの好き』のうちの一つは『八極拳が好き』という事だな」と言われました。この言葉が今でも印象に残っています。
 八極拳を学ぶという事には、呉老師の人柄を学ぶという事も含まれているような気がします。今回の講習会で、改めて八極拳を好きになった方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。

 最後に、呉老師ならびに、このような貴重な経験をする機会を与えてくださった服部先生に感謝いたします。

(三好雅史)




▲六大開拳(斜胯)。さすがに呉連枝老師の定式は美しい。

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『講習会体験記』      

呉連枝老師と同じ空気の中で老師のご指導を頂けるという貴重な体験を私がさせて頂いたのは、5/4〜6に渡って行われた講習会において、でした。
私が参加をしたのは4日、6日の2日間です。
入会をしてから初参加となった今回の講習会の初日、私は実は朝からろくに食事の喉を通らないほどに緊張して臨みました。(当然のことながらが、大変な不心得です・・・)

初日は基本を中心とした実技練習と型の効用、意味を呉連枝老師より、具体的に例となる相手をおいて解説を頂き、ひとつずつの動きがどうあるべきか、何故こうあるべきなのか、そして力がどう作用していくのかを初心者の私にも納得できるように、懇切丁寧にご教示頂きました。

通常の練習において服部先生にお教え頂いている事以外にも、突然のハプニングのように新しい事をお教え頂いたり・・・と緊張の中にも、終始なごやかな空気であったのは呉老師のお人柄でいらっしゃるのだなあ・・・と感じられました。

この日の練習の中心は小架一路と単打。
いずれも私にはまだまだ難しい套路であり、ついてゆくことすら怪しげな未熟さでありましたが、幾度も丹念に老師のご指導の元に繰り返す中で、ほんの少しではあっても、その”気”に触れることができたように思えました。

翌日の講習会に連続して参加できないことを心底悔やむ程に、その日は帰宅してからも、興奮覚めやらぬ初日でした。

一日置いて、最終日となる3日目は呉老師に、まさに講習というにふさわしく、理論的な観点からご教示を頂きました。
重点的にお教え頂いたのは『内功五行法』です。
呉連枝老師が作られた気功法である、とのこと。
内功法の論理、効用、実践法をたっぷりと時間をかけて全員で耳を傾けました。
第一功〜第五功までの意味と実際に体を動かした上でその意識を掴む練習、そして順逆呼吸法の方法など。

元々、私自身に喘息という持病があり、健康維持や体力をつけたいという気持ちで入会いたしました。
今回の講習には呼吸法を含めた気功法を老師にご指導頂く予定なので、ぜひと服部先生のお言葉も頂戴いたしまして初めて参加をいたしましたが、いい時間を頂けたと心より感謝をいたしました。



▲内功五行法の理論を説明される呉連枝老師。

▲参加者全員が理解できるように、
実技をまじえ説明される。


呉老師のご教示には八極門における八練という理論のお話もあり、八極拳の根本的な論理にも触れて頂き、とても貴重なお話を伺うことができました。
あらためて、先人の方々の深い歴史と哲学が積み重なっている、その重みを若輩ながら感じ入りました。

今回、本当に感じたのは型を覚え、鍛錬するためにはそこに裏打ちされた知識と意識を深めなければ意味がないんだなあ・・・ということです。
呉老師の折りに触れてのお話はいずれも、大変に興味深く哲学的なお言葉だと感激いたしました。

八極拳に関する書物などにこれからもっと触れてみたくなりました。自分をもっと深くしていける事に私は出会っているんだなあという実感を掴んだようでした。
そして、日々の自分の意識がいかに大切かということもあらためて反省する2日間だったと感じました。

無知な私には、聞き逃した大切な事、察知できなかった大きな意味などがたくさんあったと思います。
ですが、これからも八極拳を学んでいく上で大切にしていくべき空気を、服部先生をはじめとして皆さんと共に感じることが出来た、その一点においても今回の講習会に参加できて幸運だったと思いました。

なかなか週に一度の練習すら参加のままならない私ですがこれからの励みとして、この体験を活かして学んでいきたいと思います。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

(串田玲奈)



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『世界一八極拳が好きなおじさん』

呉連枝老師の人柄については、以前より服部先生や指導員の方々に伺ってましたが、実際にお会いしてみるとなるほど納得です。
満面の笑みを浮かべて八極拳を指導されている呉連枝老師を拝見していると、思わずこちらの顔が綻んでしまいます。

普通、これほど高名な老師ともなると、接する際に細心の注意を持って臨まなくては・・などと身構えてしまうのですが、あの笑みを見るとそれも吹き飛んでしまいますね。

講習会では、基本功でいきなり習った事もない動作がポンポンと飛び出すなど、初心者泣かせでしたね。さらに小架一路〜小架四路、単打を一気に指導して頂きましたが、私は小架二路以降は混乱してました。(笑)

私は呉連枝老師に八極拳の指導を受けたいという欲求以上に”呉連枝老師の功夫を生で見てみたい”という欲求が強かったので、もっぱら呉連枝老師ウォッチングに徹してました。(服部先生スミマセン(^^;)

その甲斐あって、ビデオや武術専門書では感じることの出来ない凄さを肌で感じることが出来ました。套路を打つ姿勢の揺るぎ無い安定感、相手を交えた技の無形な様は、流石の一言です。

しかし、呉連枝老師の凄さはこれだけでは無かったのです。
あれだけの功夫を持ちながら奢る事もなく、服部先生や生徒の皆を家族同然の気配りと愛情を持って接してくれるのです。 (爪のアカでも煎じて呑んだほうがイイですね→自分)
歓送会の帰り際、疲れているにも関わらず、一人一人に握手して慣れない日本語で挨拶する呉連枝老師の姿を見て、胸が熱くなってきました。(さらにその後、服部先生宅で色紙へのサインを願い出た生徒を一人一人呼んで色紙に書いたメッセージの意味を解説するなど、もう底抜けにいい人です)

なんだか、呉連枝老師を賛美する文章となってしまった気がしますが、正直に書くとこうなってしまうんですよ(^^;

あっという間の4日間でしたが、想い出に残る素晴らしい時間を過すことが出来ました。

服部先生、関係者の皆さん有り難うございました。


小島 直毅(HN:人造天使)



●呉連枝老師と服部代表のスナップ。取材時に撮影されたものだが、今までは対練や定式など武術関係のものばかり撮っており、このような記念写真的なスナップはとっていないことに気づいた。

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講習会レポート

呉連枝先生は、写真で見て想像していたよりも大きな方でした。手も見せていただきましたが、普通の人よりも第一関節分ぐらい大きかったです。この大きな手であの長い六合大槍をつかまれているんだと一瞬思いました。
 講習会では今まで習ったことのない動きなども練習し、八極拳の動きのバラエティーさに驚きました。さらに、1つひとつの動作にもさまざまな用法があることを教えていただき、たいへん興味をそそられました。

 先生の講義のなかで一番印象に残ったのは、相手の力そらしの話です。相手の力に逆らわず、相手の中心軸をずらすしたり、傾けたりすることによって崩すことができるという話を実際に例をあげて説明していただきました。八極拳ではどうしても剛のイメージが強いので、この話をされたときは非常に驚きました。ボードの講義でも説明していただきましたが、どんな動きにも柔と剛が含まれていなければいけないのだと感じました。普段の稽古で肩に力が入りすぎていると注意されている自分には、一番学ばなければいけないことだとあとで思いました。

 最後の日に、その話がとても印象に残ったことを通訳の方から呉連枝先生にお伝えしていただきましたところ、それに関して色紙にたいへん貴重なお言葉をいただきました。その意味が理解できるようになるまでがんばります。
 稽古が終わり、「みなさん、ありがとう」と片言の日本語を話されたときの先生の笑顔のなかに、いつも見守っていただけるような温厚なお人柄を感じることができ、いまも想い出に残ります。本当にありがとうございました。謝謝、老師!

(水上貴史)




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レポート2に続く



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