平成12年五月講習会に参加して
5月初旬に呉連枝老師が来日され、5月4日から5月6日の3日間にわたり、講習会が開催された。開門拳社に入れていただき、八極拳を習い初めて数ヶ月の私はこの突如訪れた僥倖を逃すまじと早速講習会の申込みを行い、と同時に3日に行われた提柳刀の特別講習会にも参加させていただいた。
5月3日。
それまで武器術など全く習ったことのない、まして刀など(しかも中国の)触ったこともない私は多少のドキドキ感と、呉老師を目の当たりに出来る多大なるうれしさで午後1時半が待ち遠しかった。指導員の上田さんに迎えにきていただき二人連れだって会場まで行くと、すでに何人かの参加者が来ていて"あーだこーだ"言っている内にその時がやってきた。服部先生と北海道支部長の森川さんや指導員の森さんたちとともに呉老師が見えられた。いたって!?ラフないでたちでごあいさつをして下さった。初めてお会いした老師は日に焼けたご壮健なお顔と優しい目をしていらした。そして第一印象は、本などでお姿を拝見するよりずっと大きい方だった。この思いはその後私の中でいろんな意味を含んでくることになる。
さて、提柳刀。まずは老師が刀の基本功を示して下さる。それに続いてみんなで練習。しかし如何せん初めての経験。思うように刀を扱えず悪戦苦闘。やがて套路の時間に。大汗かきかきする内にあっという間にホントにあっという間に前半の時間が終わってしまった。いろんな意味で緊張していたせいもあってか思った以上に疲れてしまっていた。練習に買ってきていただいた刀もずっと持っている内に重く感じるようになった。私よりちょっと先輩の奥村君などは日本の剣術の練習用木剣を使っていたから私たち以上に疲れたことだろう。
▲提柳刀中「散陰刀」。
約1時間半ほどの休憩中に套路を頭の中で反芻していたが、部分部分しか覚えていないことに気付き愕然としてしまう。休憩後は場所を体育館に移して後半の練習開始。うろ覚えの套路を何とかしなきゃと思いながら服部先生や指導員の方、先輩たちの動きをみたり混じったりして練習した。そのうちに何と数名ずつ表演するという。何ともしがたく恥ずかしながら表演。基礎が出来ている先輩たちは見事にこなされていた。ちょっと悔しい気持ちがわいたのはきっと私だけじゃなかったと思う。服部先生が講習会申込み時に仰っていた”練習を始めて数ヶ月のものにはちょっと難しいかもしれない。けど、経験をしておくことはいいこと。”刀の講習会を受けてそれを終えて素直に私もそう思う。せっかく習ったんだから刀の基本功を練習したり不完全な套路をじっくりゆっくり覚えていこう。しかし初日、ホントに疲れた。翌日から本格的な講習会。楽しみなのと体力が持つかななどとちょっと心配しつつ3日が終わる。
5月4日。
本格的に講習会の開始。普段の練習で行っている基本功や個人的には初めてのものなどで汗を流す。いつもに比べ大きいところでの練習なので基本功を終えただけで大汗をかいていた。続いて「小架一路」。とりあえず動きを覚えたところだったのでついていくことはかろうじて出来たがそれが精一杯だった。なるべく老師の動きを注視して自分と違うところを見つけようと努力。一見してすぐわかるのは未だにそうだけど私の動きは非常に固い。一路全部で約1分、終えた後は肩など力が抜けていない。おかげで息が切れている状態。老師や先生、または指導員の方々の動きを黙念師様して少しでも早くスムーズな動きが出来るようになりたい。
一路に続いては「単打」という套路を習う。套路自体は初めてだが所々一路と同じ箇所があるのでそういうところはついていけたが、一路に比べ套路自体が長く、また動きもわからないところが多く覚えられなかった。ただ、殆どの人が読んだことがあると思うけど、『拳児』という劇画中にでてくる「打開」という技が入っていたので何となくうれしかった。
その後しばらく各々練習して、前日の刀の講習の時と同じく少人数で単打の表演。全く出来なかった。
初日はそんなこんなで終わってしまった。ただ、当然の事ながら合間合間に休憩があり、私たちはそこで老師と直にふれあうことが出来た。高木さんと野本さんとお二方に通訳をしていただきながら…。練習の仕方についてなどいろんな質問を皆老師に向けたが、それぞれの問いに懇切にお答え下さった老師にまた感激していた。
5月5日。
体に疲れを感じながらでも心地よい疲労感で、講習2日目に向かう。まずは、昨日の復習。とはいえ単打は覚えていないので見よう見まね。本日は小架二路以降を行うらしい。ついていけるのか不安に感じながら講習内容をこなしていた。途中休憩が終わった後、老師より技の講義があった。指導員の上田さんが“受け”を取られ実演とともに講義をしていただいた。改めて動きの意味を思い知らされ、その合理性に驚倒の思いだった。
しばらくすると本日は雑誌の取材のための写真撮影があるとか。老師と服部先生が着替えられて中庭にて撮影。その模様を見学することになった。功夫着を着けられたお二人には威風が感じられて早く自分もそうなりたいと切に思って拝見した。この日は私自身の仕事の都合により途中で帰ってしまったのでその後のことを翌日聞いたが、何と小架四路まで行ったそうで、もし自分が最後まで参加していたとしても当然覚えることは出来なかっただろうが、体に通すチャンスを逃してしまったことが悔やまれてならなかった。
5月6日。
早くも講習会最終日になってしまった。この日は場所の都合で最初は狭い場所での講習。その内容は会場が狭いせいもあるらしく、八極拳の歴史や練習するに際しての心構えや、内功五行法の実技と講義それに六大開とそれを形に表している六大開拳の講義等をしていただいた。八極門の教えはそのことが人生にも置き換えて言えることで、とてもいい話だった。内功法はかなり難しく、やり方を間違えば何にもならないどころかかえって体に良くないと言うことを聞いて驚きとともに、より真剣に行わねばならないと思い知らされた。やはり全部は覚えられず、2つほどしか形を覚えることが出来なかった。が、両儀の実技中に老師が手ずから直して下さり、とても感激した。そしてその時の感覚をしっかり体に記憶させておかねばと思いつつ頭の中で自分の全体像をイメージしながら行っていた。
やがて夕方になり、二階の体育館が使えるようになり最後の実技講習に入った。開門八式や六大開拳、及び套路を行い。次に六肘頭という対練の練習。攻め手と受け手と最初動きがわからず、相手をしてもらった方にはずいぶんご迷惑をおかけしてしまった。大分覚えた頃には腕が打撃で痛くなり、休み休みしながら服部先生や諸先輩たちが行う動きの早い六肘頭を見せてもらった。頭でしか覚えていない自分としてはあまりにもうらやましい動きに稽古の大切さを思い知らされた。そうするうちに個々に習ったことを復習してついにとうとうホントに最後。老師からごあいさつをしていただき、無事講習会は終わった。
さて、今回講習会に参加させていただいて、八極拳を始めてたかが数ヶ月でこういう貴重な体験が出来たことを改めて幸せに思う。勿論講習会に参加したことによって得た事が大であるが、自分が信じて始めた一つの偉大な“文化”の宗家である老師のお人柄にも接することが出来て本当に貴重で有意義なゴールデンウィークを過ごすことが出来た。改めて思う、老師はお体も大きい方だが、そのお人柄も偉大な方だった。今度、老師が来日されるときには今回以上にいろんな事を吸収できるように精進していきたい。日々習ったことを稽古して体を動かせるように努力していきたい。その為にも日曜日に老師に色紙に書いていただいたお言葉を忘れずに練習、稽古に励もうと思う。
最後に講習会中にいろいろ細かいところを教えていただいた指導員のみなさん、そして講習会を設けて下さり、老師にお会いする機会を作って下さった服部先生本当に有り難うございました。次の講習会、夏の合宿、出来るだけ参加させていただきますのでその節はどうかよろしくお願いいたします。
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