2014.8.16-18 夏合宿

2014年8月16日から18日にかけて、長野県の野辺山高原で開門拳社の夏合宿を行いました。

今回のテーマは、「苗刀」です。

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JRの中でも最高地点(高度)にある、野辺山駅です。
標高1,345メートルの高原で、苗刀を学習します!
基礎の小提柳・大提柳から練習します。
窓から爽やかな風が入ってきます。
提柳の要諦を指導する、須原教練。

夕方は土砂降りになりました!さすが山です!

いよいよ苗刀一路の学習に入りました。
苗刀は、「対槍」の用法が多いです。
服部代表と須原教練の、用法対練。

両儀

2014 夏合宿レポート

私は昔から武術に興味を持っていましたが、実際に始める機会を逸してまま年齢を重ねてしまいました。四十路になり、あらためて何か武道をやってみようと思い立ちましたが、さすがに空手などは肉体的、精神的に無理があるだろうと思い、年齢がいっていてもやれそうなイメージのある居合道か、太極拳にしようと考え、カルチャーセンターの居合道の1日体験講座に参加したことがあります。

その際に教室に通われている生徒の方から「居合は面白いけど、模擬刀や道着の購入、その他いろいろと費用がかかる。初期費用だけで約5、6万円はかかる」といわれ、それならば同じカルチャーセンターの太極拳教室のほうが安上がりでいいと考え、結局、居合は1日体験だけで終わってしまいました。(もっとも太極拳の教室も通い始めて一年で閉鎖になってしまい、偶然、同じ曜日、時間帯にあった八極拳を習うことになったのですが)

今回、思い切って合宿に参加してみようと思ったのも、苗刀という日本刀とほぼ同じ形状のものを使用して練習すると伺ったからです。心の片隅に居合道をやり損ねたことへの未練が残っていて、それを代わりに満たしてくれるのではないかと思ったのです。

 

こうして8月16日からの三日間、合宿に参加することになりました。
合宿へ行く数日前に渡された桐の木刀は、予想以上に軽く、いくら振っても疲れないのではないか思われるものでした。また、私は、非常に物覚えが悪い為、套路などの手順を覚えるにも人の何倍も時間がかかるほうなのですが、比較的短い套路ときいておりましたので、さすがに三日間も集中的に練習すれば何とか覚えられるだろうと楽観的な見通しをたてておりました。が、そんな甘い考えは初日の練習から裏切られることになります。

まずは刀の刃筋を立てた状態で、体側からあまり離さず縦回転で振り回しながら前進していくだけの練習が始まりましたが、これが簡単なようで難しい。最初は気をつけていても、そのうちに刀が体側から離れてしまい、どうしても綺麗な縦回転になりません。握っている柄の部分を最初に前に持ってくるようにと注意され、それを意識すると、今度は歩行がおかしくなってしまいます。徒手ではなく、手に何かを持った状態だけで、歩行もままならず、手足の動きが、無様なほどばらばらになってしまいます。
また刀を下から振り上げる際には、力任せにやるのではなく、刃筋を立てたまま、スーッと撫でるようにとも注意されましたが、この撫でるようにというのが容易ではなく、この後の練習はどうなってしまうのかと不安が募るばかりでした。

そして基本練習が終わって、いよいよ套路である「苗刀一路」の開始です。
劈掛門由来の套路との事なので、本来はとまらずに動き続ける套路なのでしょうが、今回は自分も含めて苗刀が初めてという参加者がほとんどであったため、練習では、一動作ごとに、この套路で要求される正しい動作になっているかどうかを確認しながら練習が進みました。刀を持っている上に、八極拳で正しいとされる姿勢とは異なるものを要求される為、頭も身体も混乱してしまい、套路の順序自体が一向に覚えられず、非常に苦労しました。

服部先生が、苗刀一路の一動作が進む毎に、その架式で動きを止めた状態で、一人ひとりの動作、姿勢が正しいものであるかを注意しながら見て回るのですが、何しろ膝を深く曲げた低い姿勢の動作がやたらに多く、膝が次第に震えだしてとまらなくなってしまいました。先生が笑いながら「短い套路だとは言ったけれども、楽な套路だとは一言も言ってないよ」と仰っていましたが、確かに楽な套路ではありません。

ですが私にとっての最大の鬼門は、苗刀一路の後半、ほとんど最後に近いあたりの箇所でした。刀を振り回しながら一旦、身体の向きを代え、足を踏み変えて、更に身体を半回転させて戻しながら、その間、刀も止まることなく振り回し続けるという動作があります。
私の場合、この套路に限らず、いわゆる転身して足を交互に踏みかえたりする動作が「超」苦手。加えて今回は刀をもっている状態なので、ますます頭と身体が混乱してしまい、ついに合宿の最終日になっても、この最後の箇所の動作が覚えられずに終了してしまいました。
服部先生いわく「苗刀の仮想敵は戦場で槍を持った相手」との事で、「苗刀一路」は対槍への用法で成立しているそうですが、自分自身、とてもその意味を咀嚼できる状況ではありませんでした。

呆然自失のまま三日間の練習が終わってしまった感もありますが、それでも、自分なりに発見があり有意義な三日間でもあったと思います。
まずは刀に限らず、手に何かの武器を持つだけで、姿勢、歩行だけをとっても徒手に比べて何倍も難しくなることが体感として理解できたこと。逆にいえば、武器を使っての練習は、徒手の時には希薄であった姿勢、動作なども含めた身体に対する意識が強くなる為、徒手の上達についても、徒手だけを練習している人よりも格段に早くなるだろうなと実感できました。その意味では、今回、苗刀という武器の練習を体験できた事は大きな収穫だったと思います。
また何より、刀の柄を両手で持って切る動作をしていると、時代劇の殺陣でもやっているかのような気分になり、年甲斐もなく楽しく愉快な気持ちにさせられたことが、ストレス発散効果も含めて大きかったと思います。

 

以下、練習以外の雑感を記します。
合宿をした野辺山は、晴れたり曇ったり、急に雷雨になるなど天候の移り変わりが激しいのですが、さすがに避暑地だけあって、終始、清々しい山風が吹き渡り、とても快適なものでした。初日の夜、バーベキューの際にも大雨でしたが、それでも雨がやんだ後の夜空は曇っているにもかかわらず、驚くほどの数の星が見えました。都会では絶対にお目にかかれない光景でしょう。
なお、バーベキューなので、鉄板焼きをするのですが、初参加の新参者として手伝おうとするものの古手の先輩方が、これは俺たちの聖域といった厳粛な面持ちで、まるで儀式に臨むかのように鉄板焼きに専念しており、とても手伝える雰囲気ではありませんでした。

合宿所の食堂のメニューはセルフサービスになっておりますが、野菜、果物、飲み物も種類が豊富で、こうした食事を毎日きちんと取っていれば、きっと毎年の健康診断でひっかかる事もないのだろうなと思いました。もっとも初日も二日目の夜も相当のアルコール量を摂取している為、この三日間で健康を取り戻せたとは思いませんが。

合宿所では、弓道部の学生と思われる方たちも練習しておりましたが、その練習量が半端ではないのにも驚きました。何しろ朝から晩まで、ずっと練習されているのです。一体いつ寝るのだろうかというぐらい練習しています。

今回、合宿に参加させて頂いたことで、横浜教室以外の方々などと話をする機会がもてたことも貴重な経験でした。横浜教室での練習だと、メンバーも固定しており、気心がしれており、それはそれでいいのですが、どうしても馴れ合いのようになってしまいがちですが、合宿では、本部や他の教室からの参加者との合同練習の為、それだけでも緊張感が違ってきます。

参加者の方もそれぞれ個性があります。練習後、教わったこと、気づいたことを熱心にノートへ手書きでまとめている方には、こちらも頭が下がる思いでした。これくらいの研究熱心さがないと上達はしないのかもしれません。
また、中には、早朝五時くらいに起床して清里までランニングに行って帰ってくるという強者もおりました。どういう体力をしているのでしょう。
このように練習時だけではわからない、各自の個性もみえるところが、合宿の面白さのひとつなのかもしれません。

最後に、このような得がたい体験をさせて頂いた服部先生はじめ参加された皆様に心から感謝します。

横浜教室 中柴 則隆

 

両儀両儀

今日は朝から良く晴れています。

套路の学習は、2日目も進みます。

苗刀の代表的な技法「三突東洋」。

一人一人の姿勢をチェックし、修正します。
大きな鏡があるので、姿勢のチェックにとても役立ちます。
正確な突く角度を、指摘します。
親子で練習。

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合宿レポート:本部教室 須原 蒼空(そら)


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套路後半に出てくる、槍の攻撃を受け流して脚を切る大技。

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2014 夏合宿レポート

<合宿参加まで>
苗刀は、初めて套路を見た時から興味を持っていたにも関わらず、これまで習う機会を逸してきた。
今回の合宿は、幸いにも休みの都合が付いたため、迷わず参加させていただいた。
参加にあたり、得物は赤樫の木刀を用意した。
若干重いものの、その分、振り回した時の軌道が安定するので扱いやすい。
自分では良い選択だったと思う。

<合宿初日>
合宿前夜は暑さで寝付けず、当日も暑かったため、朝からバテ気味で電車の中で何度も居眠りをしてしまった。
しかし野辺山に近づくにつれて暑さも和らぎ、重かった体もかなり楽になっていた。
久しぶりの帝産ロッヂは、洗面所等がリフォームされており気持ちよく利用できた。

皆が揃った所で、早速練習に入る。
今回の合宿では、主に須原教練にご指導いただいた。
まずは基本功である小堤柳と大堤柳を習う。

小堤柳は白馬翻堤の歩法で、拗歩で切り上げる動作だが、手と足のタイミングを合わせづらく、気づけば手と足が一緒に出ている始末だった。
周りを見回すと、皆も同様に苦労しているようであった。

大堤柳は、鷂子穿林の歩法に合わせて大きく切り上げる動作で、比較的ゆったりしていて簡単そうだが、刀を大きく扱うのが難しい。
私の場合、どうしても縮こまった小さい動きになり、得物の長さを活かしきれていない。
いずれにせよ練習が必要である。

しばらく基本功を続けた後、早速、苗刀一路の套路をご教授いただいた。
套路の第一印象としては、非常にシンプルでとっつき易そうだと感じた。
小架や単打と同様に、ほぼ8方向にしか移動しない上、理解できない程難解な動作も無いので、機械を初めて習う方にも向いた套路だと思う。

練習は順調で、初日の終了時点で套路の半分近くを習うことができた。

<二日目>
朝食後、套路の続きを習う。
ここにきて、少しだけ套路の特徴が見えてきたように思う。
まず苗刀は切るだけではなく、槍に似た払いや突きの動作があり非常にお得だという事。
そして套路の構成は、前半は力強い動作が多く、後半につれ軽快な動作が増える事。
前半では体幹が鍛えられ、後半は俊敏さが鍛えられるイメージだと感じた。

午前中で套路の全体の7割程を習い終え、さらに午後の1時間ほどで最後まで通す事ができた。
套路の長さは、小架より少し長いぐらいだと思う。

その後、套路の一部分を抜出して反復練習する方法を学んだ。
この練習方法は、苗刀の上達に欠かせないとの説明を受けた。
やり方に特に決まりは無く、套路から前に進む技を抜き出し、それを繰り返して前に進んだら、今度は下がる動作を繰り返して戻ってくるといった具合だ。
つまり拳で言うところの単招式に似た練習なのだが、これが非常に体に負荷がかかる。
私の場合、5分動いたら5分休みが必要な程であった。
ここまでの套路の練習で力尽きなかったのは、私の動作が不慣れで緩慢だったためだと気づく。
つまり套路も上達すれば、もっと負荷が増えるという事なのだろう。

<三日目>
朝食後、合宿最後の練習を始める。
皆、思い思いに自由形式で練習を行った。
自分は前述の抜出し練習を行い、相変わらず休み休みではあるものの、時間が経つのも忘れるほどのめり込んでしまった。

気が付けば終了時間が近くなり、最後に全員で通して終了。
いつもながら、とても充実した合宿でした。

<最後に>
非常に有意義であっという間の三日間でした。
服部先生、須原教練、ご指導ありがとうございました。
合宿に参加された皆さんも、お疲れさまでした。

以上

 

本部教室 野田 勇

 

両儀

少人数に分かれて套路を表演し、丁寧に直していきます。
お疲れ様でした!

おわりに:今回学習した苗刀は、九宮純陽剣のように、八極ナイズされていない劈掛門から直輸入の器械です。

身法等、八極拳とは異なる所も多いので、初めて学習された方は、大変だったと思います。

参加者の皆さん、よく練習されました。お疲れ様でした。
苗刀を練習すると、体のキレが良くなりますので、今後も練習を続けていきましょう。


開門拳社代表 服部哲也


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