5月の3日に行われた講習会では、午前は小架一路、二路、四路の練習を行いました。間近で呉連枝老師の動きを見ることができ、とても感激しました。ビデオで何回も見ていたはずなのですが、実際に自分の目で直に見てみて、その迫力に圧倒されてしまいました。
僕は一路、二路の順番は覚えていたのですが、四路は覚えていなかったため、周りの人の動きを真似しながら動くのが精一杯で、重要な原理や用法をあまり意識しながら動けませんでした。
でも今考えれば、順番を覚えるのも重要ですが、呉連枝老師の動きを直に見ることができる機会はあまりないので、もっとしっかり老師の細かい動きを見ていればよかったと後悔しています。
午後からの練習では、午前中に練習した小架の復習をしてから、行劈拳一〜四路をやりました。行劈拳の一〜四路は勢いよく打つ事が大事だと教わったので、力いっぱい打つ事を心掛けたのですが、重心移動がうまくできていなかった感じがしました。
また、後に上田先生から、馬歩の時に膝がつま先より出ているし、無理に馬歩を低くしているため、不自然な力のかけ方をしている、と指摘され、とても勉強になりました。
その後は、呉連枝老師が小架の歴史と原理について講義して下さいました。そして八極拳の原理は非常に科学的であるとおっしゃっていたのがとても心に残りました。
4日の午前は、小架の一,二,四路を復習した後、呉連枝老師への質問を受け付けて、それに呉連枝老師が答えて下さる、という内容でした。
技術的な内容から、練習に関する事まで全ての質問に1つ1つ丁寧に答えられるその姿に、呉連枝老師のとても誠実な人柄が感じられました。
それらの質問に対する答えの中で、呉連枝老師が、いくら頭で理解しても、それを繰り返し練習しなければ使えるようにはならない、とおっしゃっていたのがとても印象に残りました。
やはり頭で考えることも必要ですが、それに繰り返しの練習が伴うことが上達の必須条件である、とあらためて痛感させられました。
午後からの練習では、行劈拳の五〜十二路の練習をしてから、呉連枝老師が行劈拳の講義をされて、その後に行劈拳に関する呉連枝老師への質問を受け付け、それに呉連枝老師が答えられる、という形で進んでいきました。
その質疑応答の中で呉連枝老師が、行劈拳の一〜四路は基本で、五〜十二路が応用である、とおっしゃっていたので、僕は「一〜四路は五〜十二路に比べて実践での実用性は低いのでしょうか」という質問をしました。
それに対して呉連枝老師は、「そんなことはない、一〜四路も実践においては非常に強力な威力を発揮する」、と答えられたので、基本が練習的で、応用が実践的である、という僕の考えが誤りであったという事に気付かされました。
また、この日の練習終了後に服部先生に、動きの硬さを取るにはどうしたらよいか、と質問したところ、体のそれぞれの部分を合わせることを意識するといい、とアドバイスして下さり、とても感銘を受けました。自分の体感覚を意識しながら動くことがいかに重要であるかということがわかりました。そして励ましの言葉も掛けて下さり、とても勇気がわいてきました。
5日の午前は、始めに行劈拳の復習をして、その後呉連枝老師と服部先生が、撮影のために剣の演舞を披露して下さいました。
そして午後からは演舞会が行われ、松田隆智先生に始まり、服部先生の拝師弟子の方々、森川先生、石田先生、本部の指導員の方、そして服部先生、呉連枝老師が1人1つずつ套路の演舞をされました。他では絶対に見られないであろう、これ以上ない貴重な演舞会にその場に居合わせることができて非常に幸運でした。その後は、最後に再び小架の復習をして、この3日間の講習会を締め括りました。
この講習会を通して最も印象に残ったのは、呉連枝老師の八極拳に対する愛情と情熱、それを学ぶ者全てに対する真摯で温かい指導、そしてそれを支える服部先生の武術に対するひたむきさ、そして指導者としての信念を貫こうとする意志の強さでした。
そして僕にとって最も貴重な体験は、本物に直に触れることができた、ということでした。
写真やビデオ、文章などでは伝えきれない部分、空気や流れ、雰囲気といったものを自分の身体全身で感じることができて、頭で考えることは当然大事な事であるが、それにこだわりすぎて頭でっかちになるのではなく、このような場で得ることができた様々なものを感性でとらえ、自分の経験値として蓄え、実践していくという、頭と感性両方のバランスの取れた練習を心掛けることの重要性に気付けたことが僕にとっての最大の収穫でした。
それらのことを教えてくださった、呉連枝老師、服部先生、松田先生、本部の指導員の方々、一緒に講習会に参加した練習生の皆さん、そしてこの講習会に参加する機会を与えて下さった森川先生、講習会に関わった全ての
方々に心よりお礼を申し上げます。
北海道支部 島田育興 |