2006.5 呉連枝老師講習会レポート

2006年4月末より呉連枝老師をお招きし、開門拳社として6回目の講習会を行いました。

スケジュール
4/29 八極六合槍1日目
4/30 八極六合槍2日目
5/3  八極拳講習会1日目
5/4  八極拳講習会2日目
5/5  八極拳講習会3日目
5/6  内功五法


▲九宮純陽剣


▲呉連枝老師謹製の槍を贈呈される、松田隆智先生

 今年のゴールデンウィークも、呉連枝老師の講習会に参加する事ができました。昨年に引き続き、計六日間のフル出場で申し込みましたが、特に5月3,4,5日の講習「八極拳の第一歩」は、基本功が中心となる事は間違いなく、「今年こそ途中でへろへろになるのでは?」という不安がありました。
  しかし、いざ講習会が始まってみると驚く事ばかりで、へろへろどころか、ともすると疲れを忘れてしまう様な6日間でした。

 4月29,30日は、六合花槍ならびに六合大槍の講習会でした。二年前の六合花槍講習会は、仕事とかち合ってしまったので参加できませんでした。恥ずかしながら、私が六合花槍の順序をようやく憶えたのは、わりと最近の事で、六合大槍に至っては、全くの初体験です。案の定、大槍は何をどの様に動いたら良いのか分からず、おろおろしていましたが、槍の練習は徒手にも非常に良い影響があるという事ですので、まずは六合花槍を練習したいと思います。

 5月3,4,5日の三日間は「八極拳の第一歩」というテーマで、小架一路、二路、四路に続き、行劈拳を十二路まで、最終日には八大招式、金剛八式の練習までを行いました。このうち八大招式と金剛八式については、孟村ではなく、漢族の村である羅ドウ村にて制定されたもので、呉連枝老師は参考のために教えて下さったそうです。
  内容については、練習した事のある技の別名称も多いのですが、単式で抜き出して練習した事がないものも含まれており、うまく動けませんでした。私自身がまだ、全然参考にできるレベルに達していないという事ですが、流石に習熟すれば威力の大きそうな技ばかりだと感じました。

 小架一路、二路、四路の学習には、套路と座学の時間がありました。特に印象に残っているのが、呉連枝老師が回頭を実演された時の事です。相手の体と掌や肘が密着した状態で、振り返って自分の後ろ足を覗くと、その回転力が伝わって相手が倒れてしまうのです。それが見ていると「投げている」ではなくて、本当に「ヒョイと覗いてる」様にしか見えないので驚きました。
  また盤打→白馬翻蹄→斜胯→閉胯と、胯を表裏表裏している時も、難なくとかいう感じですらなく、なんだかすごく楽しそうでした。なんだかすごく楽しそうに、掛かったら真っ逆様だろうなあ、と思いながら見ていました。また胯の力を使って、丹田を捩じりながら落とす事が大事である、と仰っていましたので、小架の苦手な部分などで特に意識しながら練習してゆきたいです。

 小架四路については、初めて経験した方は大分混乱したと仰っていましたが、私自身何回教わっても順序を憶え切れなかった思い出がある套路です。確かに私は物覚えの良い方ではないですが、小架一路から二路への壁より、二路から四路への壁の方が、ずっと高く感じました。ですから、皆さんのお話を聞くと改めて「僕だけじゃなかったんだ」と思います。
  三路、五路、六路は学習していませんので何とも言えませんが、一路、二路から四路になると、何故か突然大きく変化した印象を受けます。でもこれも、長く学習した人にとっては、同じものになってしまうのかも知れません。

 そして待ちかねていた行劈拳です。もともと行劈拳は好きな套路だったのですが、最近まで一路しか習った事がなく、実は十二種類あるんですよ、というお話を聞いて驚いていました。それも四路までは一路と同じくらいの長さの套路なのですが、五から十二までは単招式になっているとの事。しかも、開門八式の中でも特に好きだった向錘が、行劈拳の単式の中に含まれているというお話もあったので、とても楽しみにしていました。
  それまでは、行劈拳と向錘との間に関連性があるなどと、考えた事もありませんでした。

 四路までは、直前に本部教室で予習していたので、順序までは何とかついて行けましたが、いよいよ単招式に移ると、いきなり普段練習している向錘そのものが始まったので驚きました。
  何故、向錘や降龍、圏抱などが行劈拳の中に含まれているのかについて、劈で行くのが行劈であるというご説明を頂き、改めて劈とは何だろうと考えさせられました。
  例えば、向錘の払い落とす動作は、行劈拳の劈の動作そのものであり、向錘の打ち出す動作は、行劈拳の提の動作そのものの様でした。私は、行劈拳では劈の動作ばかりに気を取られて、向錘では逆の打ち出す動作に気を取られていたため、両者が実は同じ性質のものである事には、全く気付きませんでした。それで、向錘では今までよりも払い落とす動作の方に、行壁では提の動作の方に気を遣うようになりました。
  後から考えると、行劈拳と開門八式の双方に収穫があったみたいで、すごく得した気分です。何よりも「そうだったのか!」という驚きと、喜びとが大きかったです。

 座学の時間にも、呉連枝老師に質問できる機会がありましたので、服部先生に訳していただきながら、幾つか質問をしてみたのですが、一を訊いたら十の答が返って来てしまった感じで、これを理解したいと思ったら、この先何年かかってしまうだろう、というのが正直な感想です。例えば行劈拳と三歩半の関係など、それまでに考えた事もありませんでした。
  そして行劈拳について色々お話を伺ってゆくうちに「もしかすると、これは宝物のようなものではないか」と思う様になりました。
  私達が入門したばかりの頃、その単招式の一部を「これが一番最初の練習ですよ」といって、すでに教わっていた事になります。今まで基本功で練習してきた技の幾つかが、実は行劈拳の一部であった事を知って、更に開門八式が好きになりました。中でも特に向錘が好き、というのは今迄と変わりませんが…そして八極拳の第一歩というテーマで「開門八式ではなく行劈拳」を学習し、更に「参考に金剛八式」という内容は、私の中では開門八式を通じて、まさにツボでした。

 そして最終日、5月6日は八極拳内功五法の講習会です。特に今回は、パソコン病に効く按摩も併せて教えて下さるという事でした。私は仕事柄パソコンに向かっている時間が長いので、がぶり寄りで聞いていたのですが、全部はメモし切れませんでした。
  ただ改めて考えてみますと、八極拳の練習を始めてからというもの、長時間パソコンに向かっていても、肩や腰が凝ったり、変な痛みが出たりしなくなってきています。もともと腰痛持ちなので一年中快調という訳には行きませんが、明らかに以前より調子が良いので、体に変な無理が掛からない動きなのかな、と勝手に思っていました。
  ただ、これに自分でできる按摩法が加わると、非常に心強いです。ぜひ復習しなければと思います。

 最後になりますが、今回特に強く感じたのが、長年に渡って八極拳を磨いて来られた先師の皆様、八極拳を伝え、広めて来られた諸先生方の大変な努力があって、私達にも学習の機会が与えられているという事でした。当たり前の様ですが、感謝を忘れて学んではいけないと思いました。
  そして今回も、私達のような初学者にまで、笑顔でご指導下さった呉連枝老師に、また今年も大変な労力をかけて講習会を企画して下さった服部先生に、そして同門の諸先生方、諸先輩方に、改めてお礼申し上げます。
  有り難うございました。

 

本部教室 高須俊郎


▲槍の基本操法より、みっちり学びます

 今年もゴールデンウィークの三日間、呉連枝老師の講習会に参加することができました。私にとっては昨年の初級講習二日間に引き続き、二度目の参加となります。
 昨年は、小架一路をほとんど経験していない状態での参加でしたので、他の参加者の功夫に圧倒されたのを記憶しています。今回は一年間小架一路を練習し、流れを覚えて講習会に臨みました。

 今回の呉氏開門八極拳「八極拳の第一歩」は、小架一路「起式」から始まり、最後は金剛八式「虎抱」に終わる内容でした。特に、小架一路・二路・四路、行劈拳一路〜四路を集中的に練習しました。私には、極めて高度な
内容でしたが、呉連枝老師の言葉に甘えて、これも一歩と解釈し三日間を修了できました。
 印象に残った呉連枝老師の言葉、練習を私なりに述べます。

1、馬歩は建築物の基礎

 「馬歩はすべての套路の基礎になります。建築物で例えると、基礎の部分に当たります。これが不十分だと発展はありません。姿勢では、足部外側をまっすぐにし、股関節を開くが内側に意識を持ってきます。そして、肛門を天に向けるように背筋をまっすぐ伸ばすことが重要となります。」
 この言葉を実践すると、股関節の落ち着きが良くなったフィーリングがあり、うれしくなりました。

2、「有形」と「無形」をつなげる

 有形とは套路を示し、無形は実践での応用です。この二つをつなぐために研究が必要です。研究のない有形は役に立たない、有形の練習不足は功夫のなさであり、無形での弱さを表します。
 「有形」と「無形」を常につなげるように、練習を進めたいと思います。

3、感想

 ほとんどの套路を四方八方見て真似るのが精一杯でした。そんなレベルの私ですが、最後に達成感がありました。 講習会最後の「虎抱」では、体育館にいた50人以上の人間の発力が一致しました。私もその中の一員になった気がしました。この瞬間の気持ちよさを忘れることができません。呉氏開門八極拳を長く続けたいものです。

 最後になりましたが、いつも笑顔でご指導下さった呉連枝老師、素晴らしい機会を与えて下さった服部哲也先生、松田隆智先生、指導員の方々、同門の皆様に、心から感謝致します。ありがとうございました。

 

北千住教室 白井 誠


▲参加者一人一人に丁寧に指導されます▼


 今回の講習会は花槍、八極拳の第一歩、そして内功に参加させていただきました。
 講習会は全体を通して、表演や実技の「動」と板書による説明や質疑応答の「静」のバランスが良く、また内容も 深く有意義なものでした。
初日に呉老師にご挨拶したら、ちらっと一目見て「疲れているのか?」と聞かれ、前日までの仕事の疲れが残ったまま参加した自分はビックリし、いつもながらの観察眼に感心しつつ花槍がスタートしました。

 花槍では松田先生も初めて参加され、ゆっくりとした流れの中で適宜に質問や説明があり、分かりやすかったのですが、初日ということで張り切りすぎたのか、2月末になったギックリ腰が少しぶり返しました。
 次の日は、あやふやだった套路の流れも大分掴めてきた感じがし、そうなるとげんきんなもので腰も少し楽になり、よく皆が言うように「やっぱり槍は面白い」と感じました。

 いよいよ今回のハイライトである八極拳の第一歩へ続き、小架1,2,4路と行劈拳を中心に3日間の講習会が始まりました。
 ただ小架2路はうろ覚え、小架4路は全く初めて、行劈3路、4路も全く初めてなのに、短い説明の後に一気に流れるので、早すぎて全然ついてゆけませんでした。
 また休憩時間には呉老師、松田先生の間のイスを勧められて座ったところ、案の定全然落ち着けずただ恐縮するばかりでしたが、そのあとは松田先生といろいろな話ができ楽しいものになりました。

 そしてついに目からウロコのハイライトは、呉老師が自説として「八極拳の前身は行劈拳」との衝撃のルーツと、 その根拠として行劈拳のコンセプトが順歩単提で八極拳と同じと説明された時で、以前から服部先生が予告されていたとおり言われなければ全く分からない予想外のものでした。
 さらに行劈5路以降12路までの単式の後で「コンセプトが同じ、成る程そうかも」とようやく腑に落ちたそのすぐ後に「1路から4路の套路が基本で、5路以降の単式が応用」と聞いてまたまたビックリ、思わず「そう言われれば確かにそうだなー」と心の中で何度も呟きながら目からウロコを落としていました。
 また小架2路の後は、全く初めてで激しい動きのせいか、忘かけていた腰痛が戻ってくる中、呉老師の「六大開を考えて練習すべき、そうでなければ武術でなく体育である」に耳まで痛くなり反省させられました。
 最終日に呉老師が締めの挨拶の中で「自分自身も常に第一歩の気持ちでやっている」と話された時なぜか凄く感動し「講習会に参加して本当に良かった」と実感しました。

 最後の内向法では、新たに丹田の概念の説明やパソコン病の対処法もあり内容が年々進化している感じがしました。

 最後に、この講習会を開催され指導された服部先生と、その都度適切なアドバイスをいただいた指導員の方々に感謝するとともに、また来年も楽しみにしております。

大森教室 浅井正一




▲花槍の用法説明


▲六合大槍の下盤の変化



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