2007.4.28〜5.5 呉連枝老師講習会(2)

 今回、呉連枝老師講習会は3・4・5日の「八極拳徒手中心」に参加させて頂きました。
 '04年から荻窪教室で教えて頂き、GW講習会は'05内功法、'06八極拳に続き今回が3回目の参加で、会の皆様とも少しづつ面識が出来、初めの頃と比べると心に余裕を持って参加出来ました。
 講習会が終わり、このレポートを書くにあたって、再び過去のレポートや書籍を読むと今回老師に教わった事も書かれていましたが、テーマを絞り、順を追って解説してくださる老師の板書を見、声を聞き、動きを見せて頂くと、とても理解しやすく、自分の中で散乱していた勉強内容が少しづつ整理されていくようでした。

 初日は小架1路から始まり、【起歩】の重要性について、八極小架理論から歩形とその変化、対錬の方法から用法、呉氏開門の意味、三拳とは、陰陽思想、行気についてなど解説された上で単打の練習になりました。
 今回の徒手はテーマが「単打・対打の奥妙」だった為、対打に適した単打である【古式】の単打を教えて頂きました。同じ単打という名前がついていても表演用や、練習用で違う動きをするという考え方に驚きました。今まで習っていた動きと違う動きが出てきたので戸惑うと同時に、解説頂いた【起歩】を意識した為、最後まで動きがバラバラで四苦八苦しました。

 2日目になると動作の他に、起動の歩法、武徳、古訓など、

 3日目には指導員の方の対打に合わせた老師の解説の他に狭い場所での練習法、貞節烈女防衛術、踏み込み時の歩法、八極の由来、六大開理論について解説頂きました。

 今回自分にとって一番印象に残った部分であり、大事にしなくてはならないと思った事は【武徳】でした。

 為師授徒者先授以仁義後授以忠勇 *仁義=徳 忠勇=功夫

 更に老師の「考えなさい」の言葉。
 武術だけではなく、技術だったり、色々なものが手に入る時代ですが、使い手側の意識がとても大事なものだと思っていた矢先だったので余計印象に残ったのだと思います。

 講習会を終えて、思ったこと。
 習ったことを一瞬に完成させることが八極であり、その一瞬以外が八極でなければ一瞬に完成することは無い。と言われたような。
 白い水と黒い水をあげるから、これで陰陽のマークを作ってごらん。と言われたような。
 更に八極拳を理解したような、更に迷路に迷い込んだような気分です。

 最後になりましたが、講習会も終わり大分経ちますが、なかなか考えが纏らず乱文で失礼致しました。以上の事で間違い等ございましたら未熟者だと思いご容赦ください。
 これからも遅歩ながら精進したいと思います。

 呉連枝老師を初め服部先生、松田先生、指導員の皆様、会員の皆様、大変お世話になりありがとうございました。これからも宜しくお願いいたします。

 

荻窪教室 永松 英紀


▲昨年に引き続き、呉連枝老師から松田隆智先生へ練習する武器の贈呈。
今回は、斉眉棍です。


▲参加者に、棍を扱うときの心得を話される呉連枝老師


▲用法解説


▲行者棒・呂布架戟


▲▼用法について、丁寧に解説される老師


▲遠方から参加された方々も、一緒に記念撮影

 今年のゴールデンウィークも、恒例となった呉連枝老師の講習会に参加させて頂く事ができました。中国本土でも黄金週の始まるこの時期に、七世宗家である呉連枝老師が、わざわざ日本にまでご指導にお見え下さるのは、本当に有り難い事です。

 今回は、4/28 の内功五法講習会、4/29,30 の行者棒講習会、5/3,4,5 の単打・対打講習会と、計6日間参加させて頂きましたが、とにかく内容が濃くて、あっと言う間に過ぎてしまったという感じです。

 初日の内功五法講習会では、呉連枝老師が編纂、整理された内功法と按摩法についてご指導頂きました。確かに内容は難しく、そうそう理解できるものではないのですが、他のどの講習より、両儀について詳しく解説して下さるので、これは必見の内容だと思います。

 いつも気になっていて、いつも上手くまとまらない両儀は、素人目に見ても、とても不思議な形です。攻撃している様にも、防御している様にも見えますし、八極拳の技の基準になっているとも聞きます。今回特に印象に残っているのは「三角形は四角形より安定した形である」というお話でした。
 四本足の机と違って、三脚はどんな地形に立てても安定である、例えば弓歩の時に、膝がつま先より前に出てしまったり、背筋が立ち上がってしまうと、そこにも頂点が増えて、身体全体の三角形は崩れてしまう、等など驚きの連続でした。無数の三角形から出来ていて安定している大きな三角形というと、東京タワーの様な鉄骨建造物を連想してしまいます。

 続く二日間は行者棒の講習会です。行者棒の套路自体は、繰り返し動作が多いものの、かなりの長さがあるので、初挑戦の私にとっては、順序を覚えるので手一杯という感じでした。
 今までに何回か套路を見せて頂いた事はありましたが、行者棒が、実は西遊記に因んだ套路である事は知りませんでした。そのため、猿の動作を取り入れた部分が多いとの事で、もともと機敏な動きが苦手な私にとっては、とても厳しい二日間となりました。

 両手の間で棍を滑らせながら、盤提で退歩するなどと、初めて見た時には「そんな事できる訳ない〜」と思いました。ただ事前に、基本功は教えて頂いてましたので、講習会を受ける頃には「これって楽しいかも」と思う様になっていました。実は徒手の盤提も、下手なりには好きなのですが、こちらは更に難しくてハマります。もう少しまともに動ける様になれば、凄く楽しくなりそうです。

 しかし身法、歩法は噂に違わぬ難しさで、早速「全体的にカッコワルイ」認定を頂いてしまいました。
 例えば、上半身に力が入り過ぎると棍が滑りませんし、下半身がおぼつかないと、棍に振り回されてしまいます。更に、徒手の時よりもっと、柔らかい歩法を意識せざるを得ない感じです。そうする事で、見かけが一歩分でも、より多くの距離と力を稼いでいる様に見えました。後から考えると、今回の行者棒と、単打・対打の講習会とは、歩法で繋がっていた様に思います。

 そして最後の三日間は、単打・対打がテーマです。初日の午前中は、小架と基本功をご指導頂き、それ以降は単打・対打が中心の内容となりました。今回教えて頂いた単打は古伝のやり方で、より対打の動作に近いものだそうです。普段練習している単打と、そんなに大きくは違わない筈なのですが、格段に難しく感じます。

 さらに座学では、八極拳の「いわれ」について、呉氏三拳と三位一体について、八極拳の沈力・摩擦力・加速力について、上盤・中盤・下盤と三盤合一について、果ては六大開と六十四手論についてと、私程度の拳暦では到底理解できそうもない領域にまで及びました。正直、猫に小判以上のギャップを感じますが、今理解が及ばない事を焦っても始まりません。お話頂いた事を少しでも覚えていて、いつか役立てられる時が来ればと願うばかりです。それでも、講習会の前から興味を持っていた部分について、かなり詳しいご説明を頂けた事は、とても嬉しかったです。

 単打は何度も上歩掌が出てくる套路ですので、今回、上歩掌のお話が聞ければいいなあと思っていました。でも非常にショックを受けたのは、上歩掌が完成すれば、八極拳が完成した事になるというお話です。確かに上歩掌の難しさは漠然と感じていたのですが、いきなり気の遠い話になってしまいました。その後、上歩掌の中に含まれる六大開を解説して下さったのですが、例えば六大開拳がそれぞれ、六大開の中のある要素が他の要素より強調されているとするならば、上歩掌はどの要素が弱くても成り立たない、という事になってしまうのでしょうか。冲拳と似ている様で似ていない様な、基本功でありながらとても謎の多い部分だと思いました。

 また今回、呉連枝老師は三歩半の定義を示して下さいました。その上で小架や単打の足の使い方をご説明頂いたところ、もしかしたら套路の大部分が該当してしまうのでは、と思いました。考えてみますと、向錘の様に三角形に歩を進めるときも、あるいは上歩掌で直進する場合にも、跟提歩に続いて上歩するあたり、これも同じ事になってしまうのでは…頭を抱えている暇で、もっと練習しなければなりません。

 今回呉連枝老師は、行者棒や単打・対打の講習会において、人道の重要性を繰り返し説いておられました。私達が練習を続けて、仮に今より強い人間になる事ができたなら、余計に悪い事を考えてはならない、そう仰っている様でした。その前提にたって、昨年より多くの重要な秘訣を公開して下さったものと、思わざるを得ません。また、開門拳社で八極拳を学ぶ者は、日本人として初めて八極拳の故郷を訪ねられた、松田隆智先生への感謝の気持を決して忘れてはならない、とのお言葉が強く印象に残っています。

 常に魅力的な笑顔で、暖かく熱心にご指導下さった呉連枝老師には、感謝の言葉もありません。また今回の講習会でも、服部先生の常に変わらぬ御尽力と、拝師弟子の皆様のお心配りとがあって、お蔭様で本当に素晴らしい六日間を過ごす事ができました。改めてお礼申し上げます。
 

 

本部教室 高須俊郎

 


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