今年の夏は、海やプール、花火大会や旅行、そういった夏らしいことを何もせずに過ごしました。ただ、開門拳社の武術合宿に全精力で打ち込みました。ぼくにとって2001年の夏は、唯一、劈掛拳によってのみ思い出されるものとなりました。
合宿は8月10日から14日までの3泊4日、河口湖畔にて練習に明け暮れました。テーマは劈掛拳。それと、機械をひとつ。
劈掛拳は、八極拳を学ぶ上で、どの段階で練習してもよいとのことです。小架を覚えたばかりでも、単打を学んだ後でもかまわないので、開門拳社の様々な段階の人がいっしょになって学習するのに最適な套路として、先生が選ばれたのだと思います。
機械は提柳刀か行者棒から1つを選択して練習しました。ぼくはピカピカしたものが好きなので、提柳刀を選びました。
■合宿への心構え
合宿に向けて、自分なりに3つのテーマを決めました。
1)マッチョ化を目指す
2)常に全力で練習する
3)その場で覚える
ぼく自身の夏のテーマとして、「マッチョ化」というものがありました。いつも夏になると少し身体を鍛えるのですが、そろそろ三十路を目前に、筋肉が付くうちにできるだけ鍛えておこうと。5キロのダンベルを買い込んで、毎日プロテインを飲みながら、ワークアウトに励んでいました。合宿にもプロテインを持ち込んで、毎日飲んでました。これがひとつ目のテーマです。
それから、「常に全力で練習する」と決めました。4日間も厳しい練習が続くと思うと、それだけで気持ちが萎えてしまいます。「体力が続くかな…」などと弱気になると、もうだめです。とたんに自信がなくなって、「明日の為に体力を残さなきゃ…」と、力を抜くようになってしまいます。そんな風にならないよう。「倒れるなら倒れればいい!」という気迫で挑みました。
もうひとつ、「その場で覚える」ことを心がけました。「後でテキストを見ればいいや」、「人に聞けばいいや」などと考えず、その場で集中し、必ず覚えるようにしました。特に、午後の練習は体力的にきつく、頭がぼんやりしてしまうものですが、できるだけ集中して練習に挑むようにがんばりました。
■初日
お昼過ぎに到着。昼食を食べて、午後2時から3時間の練習を行いました。
宿舎近くの体育館が使えなかったので、車で10分ほど行ったところにある山中の巨大体育館にマイクロバスで送ってもらいました。巨大…驚くほど大きな体育館です!
初日の練習は基本功を中心に、徹底的に身体を痛めつける、猛練習です。まずは、站椿功。まるで時間が止まってしまったかのような長時間の馬歩・・・それから、何千本も続くかと思わせる定歩拳・・・八式での無限往復・・・
これくらいで根を上げてはいけないのでしょうが、これが毎日続くようならもうダメ…と、少し弱気になってしまいました…。ですが、先生の次の言葉を思い出し、「まだまだがんばるぞ!」という気持ちになりました。
「普段一人の練習だとギリギリのところまでいかないだろう。今回は、ギリギリの一歩手前までがんばりなさい。限界を超えるようなムチャは必要ない。もう限界だと思ったら休んでよいから、がんばりなさい」
最後に、小架二路を少し教わりました、全部覚えるだけの時間はありませんでしたが、小架1路に出てくる動作の変化として、「なるほど!」と感じるものがいくつもありました。身体を通すだけでも大いに意味があるのだと感じました。
ちなみに帰りのマイクロバスは、汗にまみれた男女が詰め込まれ、この世のものとも思えない匂いでした。
夜学では内功五行法を教わりました。日中の練習があまりにこたえたのか、睡眠学習に励む人もちらほら見受けられました。
そして、締めくくりは、やはり先生の一言。「飲もうっ!」
■2日目
今日は劈掛の日です。一日かけて劈掛を覚えます。
午前中はもう一度、山中の巨大体育館での練習になりました。
劈掛は伸びやかで、楽しいです。腕をぶるんぶるん振り回すので、なんだか気持ちいいのです。伸びやかで、柔軟で、くるりと回る身法も心地よいです。ですが、思った以上に体力を使います。肩の筋肉、特に三角筋後部が異様に疲れました。普段、あまり伸び伸びと身体を動かしていないのだなと、反省です。それと、朴歩はきついです。もっと股関節を柔らかくしないといけません。これも今後の課題です。
午前中だけで、劈掛の套路をだいたい覚えることができました。
午後からは宿舎近くの体育館での練習です。大きさは山中の体育館の半分ですが、それでも十分な大きさです。
まず劈掛の復習をして、それから、機械を教わりました。刀と棒に別れたのですが、ぼくは提柳刀を練習しました。刀を使うのは全くの初めてだったので、手首が硬く、うまく回せません。人差し指と親指で挟むだけ、と言われても、やっぱり握ってしまいます。刀の練習をした後、左右の手首を見比べると、明らかに右手首の方が柔軟になっていました。
夜はレクリエーションとして花火を楽しみました。花火職人が出没し、飽きるくらい大量の打ち上げ花火を上げてくれました。職人が煙にもだえながら火花を背中に浴びるさまには感動を覚えました。
■3日目
この日は、午前も午後も劈掛の復習と、引き続き提柳刀の練習です。
さらに羅漢拳を教わりました。動作は単純ですが、ゆっくりと正確な形を作りながら練習します。とにかく、歩形を低くすること。「もっと低く」と先生がおっしゃるたびに、汗がじーっとにじみ出します。これは、半端でなく、苦しい練習です。
先生は「羅漢拳で伸ばす」とおっしゃいましたが、ガチガチに力んでしまい、もっと下盤を鍛えなければと思いました。一路を通すだけでもへとへとなのに、四路まであると聞いて驚きました。
夜は座学を兼ねた宴会です。先生からじきじきに生活指導をいただきました。
■最終日
練習は午前中で終わりです。総復習と仕上げを目指してがんばりました。
劈掛も提柳刀も、なんとか順番を覚えることができました。順番さえ覚えていれば、動作がへたくそでも、一人で練習することができますので、少しずつにでも上達できるでしょう。
■合宿を終えて
きつい練習を終えて、自分なりの課題をこなせたかどうかを考えてみました。
「マッチョ化」ということに関しては、90点です。かなりたくましくなりました。プロティンだけでなく、クレアチンドリンクやグリコーゲンも飲みまくって、おかげで、ちょっと太りました。 「常に全力で練習する」は80点です。かなりがんばりましたが、もっと、もっとがんばれたんじゃないかと感じる部分もあります。
「その場で覚える」に関しては、苦しい羅漢拳を覚えきることができなかったので、70点です。
合宿から帰った翌日、どうしても身体を動かしたくてウズウズして、公園で練習しました。すると、明らかに、合宿前よりもパワーアップしているのがわかりました。下盤の強さ、肩の柔軟性、全身の安定感など、気持ちいいくらい身体が動くのです。
とはいっても、まだまだ課題だらけです。八極拳の奥深さと、楽しさ、魅力を改めて理解し、志も新たに練習に励もうと決意しました。
参加した価値のある、すばらしい合宿でした。
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