合宿、心に不安と期待を胸に躍らせながらその日を遂に迎える事になった。
八月九日、不運にも関東地方に台風が直撃した日、夏合宿は幕をあけた。特急あずさが台風の影響で運行中止になるというアクシデントが起こったが、服部先生の臨機応変な対応のおかげで宿舎に辿り着いた。
一日目の練習は「対練」と今回のテーマである「通臂長拳」を中心に行った。対練は普段顔をあわせる事の無い色々な教室の人と練習でき、勉強になる事が多かった。通臂長拳は二年前の合宿で練習し、套路の流れだけある程度は憶えていたので今回は内容を追及することを目標としていた。しかしゆったりと動き、低い架式をとる通臂長拳はかなり辛く、どうしても肩に余分な力が入り。架式の崩れを注意することに必死で内容を深く追求することはほとんど出来なかった。
夜は座学が行なわれ「六大開」「八打招」を中心に学んだ。六大開はいままでに多少学んだ事はあったが八打招は初めて学ぶものだったので非常に好奇心を掻き立てられた。実際に学び、頭ではそれらの理論の輪郭だけは大体理解できるものの、それを体現することの難しさも知った。その後、合宿恒例の宴会が行われた。面白い話やためになる話を聞くことができ、楽しい時間を過ごすことが出来た。
二日目、朝寝坊と言う失態により早朝から行われた内行五行法に参加できず、大変残念な思いをした。
練習は午前中、全体で通臂長拳を中心に行った。時間をじっくりかけて用法まで説明があり非常に分かりやすく勉強になった。午後は「限定自由散手」という、日本の相撲のルールに似た練習をした。楽しい練習で新鮮な練習であったが、自分の下盤がいかに貧弱でバランスが悪いかを思い知った。
その後、グループに分かれて「四郎寛」という套路の練習を行った。それにより自分がいかに外形ばかりにとらわれて套路の中身がなく、考えが薄い練習しかできていなかったか分かった。さらにその中で「小架五路」も教わる事になった。小架五路は四郎寛の為の套路といわれる物で自分は初めて見る套路だった。その身法はやはり四郎寛に近い身法があり新たな練習課題となった。
二日目も夜には座学を行った。
二日目は「十大剄別」と「十大形意」、今まで聞いたことの無い理論だった。これもまた大体の理論の内容は把握する事が出来たが前日のものと同じく正しく体現するのは難しいと思った。
三日目、念願の早朝内行五行法に参加し、気持ちの良い朝を迎える事が出来た。
三日目の練習も軽く通臂長拳を練習後、グループ分けをして先日教わった小架五路や四郎寛の練習と用法を深く研究した。小架五路の流れを憶えつつその用法と内容を深く研究し、大変勉強になった。三日目の午後は四郎寛などの午前と同じような課題の後、「行劈拳」や「六合花槍」も触れることができた。特に行劈拳は非常に短い套路であったが身法の難しさには苦戦、特に膝の使い方は大変だった。自分の膝の硬さを痛感させられた。
三日目、最後の夜は宴会のみ、自己紹介なども交えつつ楽しい夜を過ごす事が出来た。
最終日、早朝の内行五行法の練習は無く、二日目、寝坊した事を後悔した。最終日の練習は午前のみ、今までの復習などを中心にとり行われた。それまでの三日間注意された部分を意識し、総復習という意味合いを持って練習を受けた。
あっという間の四日間、楽しく充実した日々を送る事が出来た。もちろん急激に実力が上がったわけではないが八極拳の事をたくさん考える時間が持てて良かったと思う。自分の現在の課題を解決するヒントを得るために参加した合宿だったがそれ以上に学ぶ事が多く、理論など一人でやる練習にも役に立つことや参考になることが多かった。新しい套路も学び、満足する内容だった。自分を見つめなおす機会ともなった。
最後に、物覚えが悪く理解力に乏しい自分を根気よく教えていただいた服部先生や皆様に深く感謝いたします。
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