2009.5 呉連枝老師講習会(2)

09GW講習会

 


▲練功法講習会。


▲ダンベルを使った功法の解説。

2009年 呉連枝老師講習会参加レポート

今年も、ゴールデンウィークに開催された、呉連枝老師を招聘しての講習会に参加させて頂きました。
今回は4月25,26,29日の九宮純陽剣講習会、5月2日の練功法講習会、5月3,4,5日の八極拳講習会の計7日間、フル参加が叶いました。久し振りにお会いした呉連枝老師は、あい変わらず終始笑顔で、その暖かいお人柄に触れて、あらためて過分な幸せを感じる事のできた7日間でした。

最初の3日間は、九宮純陽剣の講習会です。昨年の夏、憧れと勢いだけで始めた剣の套路は、何とか順序をトレースできるところまで続けてきました。この套路はとても美しいのですが、とにかく難しく、しかも長いため、正直なところ途中で挫折するんじゃないかと自分では思っていました。
ところが、長穂を体中にひっ絡めて、あまりの動けなさにムキになって、気が付いた時には剣を回しているだけでも楽しい状態に陥って今に至ります。なかなか上達はしないのですが、諦めずに続いているのは、とにかく練習を続けてさえいれば、どんどん楽しくなってくるからではないかと思います。

今回公開して下さった九宮純陽剣の拳譜は、八極門に古くから伝わるもので、動物の形意などから技の名前が付いているので、名称の意味を考えれば、ある程度動作の要求を理解できる様になっているそうです。とはいうものの、あまりにも雅な名前が多いため、要求を考え始めたら、それこそ並大抵ではなさそうです。
今回、剣を持つ呉連枝老師の掌はますます大きく感じられ、剣や長穂の流れも軽やかで、その部分が別の生き物の様に見えました。今年の始めに諸先輩方が孟村から持ち帰った功夫剣(とても重い!)でさえ、大杆子を指で持ち上げるような方からすると、決して重くはないのでしょう。老師の「簡単でしょう?」「そんなに疲れないでしょう?」とのお言葉に、「いえそんな事は・・・」と喉まで出かかったのですが、やっぱり黙っていました。

今回の講習会では、呉連枝老師から直接動作の要求等について御指導頂き、何とか順序をなぞれるだけの段階から、一気に難度が上がってしまった様に感じます。思わぬ所が独立歩や点歩であったり、本当はこうするのが良いが、ムリだったらこうしなさい、という部分が沢山あったり、何より殆どの動作に必ず啓歩が要求されます。
長い套路ですが、実は両足でしっかり立っていられる時間はあまりなく、その分いつでも動き出せる状態を常に保っている様に感じられました。また進退や攻防の陰陽を対応させる事、陰陽の相生・相克については、まだ私には明らかに早過ぎる様で、理解が及びませんでしたが、例によって、あまり焦らない事にしました。

呉連枝老師は、剣は古くには権利の象徴で、文明の利器であると仰いました。また、剣は威力ある武器であり、心身の健康に優れ、練習する者と表演を見る者、双方を気持ち良くするものだそうです。あ、あとお肌の美容と高血圧対策、それからダイエットの効果もあるとの事で、なんだか無敵ですね、ある意味。
呉連枝老師ご自身が、本当に純陽剣をお好きで、強くお薦めされている感がひしひしと伝わって来ました。昨年、服部先生が「来年は九宮純陽剣を教わります。」と仰った時、内心「うっひゃ〜」と思っていたのですが、今では九宮純陽剣に触れる事ができ、また呉連枝老師に御指導頂く機会まで与えて頂いて、とても感謝しています。

続く5月2日は、練功法の講習会でしたが、今回はいきなり軽身功のご説明から始まり、少しビックリしました。軽身功の中には、内功法で教えて頂いた事のある、握空拳功が含まれていたのが興味深かったです。軽身功はまず下盤の功夫を付けてから、休まず三年は続けなければならないとの事で、私はもうこの時点で足切りです。また十字手を中心とした、八極拳の拿法についても御指導頂きました。もともと八極拳では、拿法より打撃を重視するとの事ですが、その割にはとてつもなく奥が深そうで、十字手の練習は是非続けていきたいものの一つです。
しかし何よりも今回インパクトがあったのは、ダンベルではないでしょうか。昔は石鎖と呼ばれる物を使っていたそうですが、現代風に言えばダンベルだそうで、ダンベル基本功、ダンベル単招式、ダンベル套路と、かなり驚きの展開が待っていました。今まで、物を打つ練習をしようとすると、いつも手首を傷める怖さを感じていたのですが、こういう練習をしている人達と比べたら、当たり前だと思ってしまいました。あとは、槍の練習が足りていないのかも知れません、私の場合。

そして最後の3日間は、八極拳の徒手の講習会です。初日は老小架一路とその対練、六肘頭などを中心に御指導頂きましたが、老小架一路の対練で特に印象に残ったのが、その「恐さ」です。
対練の套路が完備されている流派は、実はそんなに多くないそうですが、八極拳には対打、六肘頭、扶手など多くの対練套路があります。六肘頭では実際に相手の顔めがけて拳を繰り出し、それを受け流さなければならないなど、気を付けないと危ない練習法もありますが、老小架の対練では、実際に相手に触れる事は殆どありません。それなのに、精神的な圧迫感は対打より、六肘頭よりも更に上であると感じました。理由はよく解らないのですが、お互いの攻防が合わさっているというより、攻撃と攻撃が合わさっている感じで、実は八極拳同士が向かい合ったときの緊張感は、こちらに近いのではないかと想像してしまいます。

また六肘頭対練は、初めて経験する方々がこぞって「これは素晴らしい」と仰っていたのも、とても印象的でした。今まであまり考えた事はなかったのですが、六種類の頭(拳)と、六種類の肘とが、攻防の組み合わせで全て現れ、しかも活歩の三靠劈まで含まれるというのは、恐ろしい完成度だと改めて気付かされました。正直なところ、最近六肘頭から少し遠ざかっていたので反省すべき所です。

現代の小架については一路から四路までを、歩法に気を付けながら御指導頂きました。小架はそれこそ一生モノとして、ご指摘頂いた跟提歩(!)や啓歩に気を付けながら、気長に練習して行くしかなさそうです。
また、講習会を通じてのテーマに「啓歩の実用」があるとの事でしたので、今回はなるべく呉連枝老師の足さばきに注目しよう、と思っていました。呉連枝老師の啓歩は、特に強調して見せて下さっているとき以外は、見えにくい事も多かった様に思います。啓歩がその後の歩法と滑らかに繋がっていて、あるいは続く動作の一部分として、埋没していると感じられました。
自分で啓歩を意識して練習しようとしても、どうも一動作増えたような気がして、違和感を感じているうちは駄目なのかも知れません。例えば右足を上歩する時に、自動的に左足から動き出すというくらい、四朗寛であれば三歩半あたりで訓練しておかないと、気が付いたら套路の他の部分で忘れたり、ましてや咄嗟の時に啓歩から動き出す、というのは難しいのではないかと思いました。

また多くの場合、啓歩が相手との位置取りにも、重要な役割を果たしている様に感じます。例えば右足で盤提を掛けようとするとき、まず左足が相手に対して優位な位置に入り、その勢いをそのまま右足の蹴りに繋げているのではないかと思いました。
小架において、弓歩から発力する時に、後足(?!)から動き出す事が多いのも、慣れるのが大変と感じますが、これも例えば四封四閉の様に相手を投げる場合などで、後足が先に位置取りに動いていると感じますので、通背式以降の部分を練習する時などに、何とか癖を付けてしまいたいと思います。

そして今回何よりも驚いたのは、呉連枝老師が六十四手論の一端を公開して下さった事です。とは言っても私などは、そういうものがあると聞いた事があるだけで、秘伝であるという事以外、内容については殆ど何も知りませんでしたし、まさか私達にも学習の機会が与えられるとは思っていませんでした。そして老師のお話を伺ってゆくうちに、どうやらこれが対練の一種である事、決められた攻防のパターンから、徐々に変化を広げてゆくらしい事、などが分かって来ました。
実は単招式で学んだ事のある技術もたくさん含まれているのですが、招式の名前が違って書かれているため、それぞれが何を意味しているのか、教えて頂くまで中身は殆ど分かりません。ですが、意味をご教示頂くと、一つの招式に複数の名称があるという事が、逆に要求を理解する助けになるのではないかと思いました。

仮に名称の意味を教えて頂いたとしても、要求を考えながら対人練習を積まなければならず、更に六十四手それぞれの中での変化に加え、六十四手間の繋ぎ変えもあるという事ですので、これは秘伝であるとか以前に、本当に習得可能なんだろうか的な怖さを感じました。何か練習の効率を上げる工夫も隠されていそうですが、そもそも私には早すぎる内容である事に変わりないので、深く考えないことにします。
ですが! やはり六十四手の中にも向捶はあるという事で、今回そのお話になったとたん、もう「向捶キター!」状態に陥ってしまい、途中から頭の中は真っ白に近かったです。内容としては掛肘から看板技への連携、という感じで「うお〜!八極拳ぽい!」とか勝手にはしゃぎまくって・・・今では少し反省しております。

嬉しいこと尽くめの7日間はあっという間に過ぎて、今回改めて感じたのが、呉連枝老師にお会いすると、とても元気になれるという事でした。呉連枝老師や服部先生をはじめとして「八極拳が大好き」な方々の輪の中で、老師の常に笑顔で、分け隔てないご指導にあずかれる事は望外の喜びです。
私はもともと、気が小さいのを改善したくて「格闘技」を学ぶため、開門拳社に入門させて頂いたのですが、気が付いてみますと、思いがけず沢山の嬉しい経験を経て、結果的に、自分の気が小さいかどうかは、どうでも良くなってしまいました。どれも望んでも得られないと思っていた事です。
呉連枝老師と服部先生御夫妻、そして指導員の皆様、同門の皆様には、とても感謝しております。ありがとうございました。来年の講習会にも、是非参加できる事を楽しみにしております。

本部教室 高須俊郎

 


▲鉄砂掌の功法について語られる呉老師。


▲空手奪刀を示される呉老師。


▲擒拿・反擒拿の方法について詳説される呉老師。



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